蝠聚会(東京)

三味線の方々が浄瑠璃を語る蝠聚会。今回は二十周年記念で東京でも開催されたので、行ってみました。

太夫ではない方が語る浄瑠璃といえば、東京で聞いたことがあるのは天地会。大体、はちゃめちゃな語りです。とはいえ、今までにトーク付きイベント等で燕三さんの太夫顔負けの迫力ある語りは何度も聴いたことがありますし、赤坂文楽だったかで藤蔵さんの女形の語りもほんの少しだけ聴いたことがありました。というわけで、聴く前の予想としては、清介さん、燕三さん、藤蔵さんあたりは本格的で、それ以外の方は、それなりって感じなのではと思っていました。

ところが、ところが!最初の『絵本太功記』「夕顔棚の段」の清志觔さんから無茶苦茶本格的です。全然、同世代の太夫陣の語りに負けていません。びっくりしました。客席も語りが終わった後はどよめいていました。

その後に続く、宗助さん、清介さん、燕三さんも、予想通りの本格派です。いやはやすごい。太夫陣も形無しです。考えてみたら、いつも太夫の隣で聴いている訳だから、本職の太夫を除いて、最も贅沢なお稽古をしている人達ですよね。それから、燕三さんを弾いたのが燕二郎さんがものすごく手が回っていてびっくりしました。あんなに上手かったなんて、驚きです。燕三さんとの息もぴったりで、さすがの師弟関係でした。


第二部は、私にとってのお待ちかね、『一谷嫩軍記』の「脇ヶ浜宝引の段」。2016年の9月公演にて咲師匠・燕三さんで初めて聴きましたが、シリアスな一谷嫩軍記にこんな笑える段があるなんて、驚きでした。

今回は掛け合いで語ります。まず弥陀六は、勝平さん。貫禄です。そして、とぼけた村人達は、清丈`さん、友之助さん、清馗さん、清公さんの面々。清丈`さんと友之助さんは共に、期待を裏切らない面白さでした。また、清公さんは普段の三味線の音も繊細ですし謙虚な方のイメージなのですが、開口一番、鶏の鳴き声。ひょうひょうと笑いを取っていました。しかし、一番ツボってしまったのは、清馗さん。担当した役は、熊谷が敦盛を討つ場面を超ユニークな視点から説明する与次郎。2016年の『一谷嫩軍記』通しで聴いた咲師匠を彷彿とさせる、おとぼけ度です。清馗さんは兄・織太夫さんと、イケメン・ブラザーズ路線を行っているのかと勝手に思っていたのですが、全く違う次元の才能を見せつけられました…?そして、配役には名前があれど姿は見えず、謎だった藤蔵さんは、清公さんと入れ替わりで、運平と庄屋さん役。一番美味しい役どころでした。

いつもと違う三味線さんの姿を観て、会場も興奮気味でした。次の東京開催は10年後とか。せめてオリンピック並のペースでの開催を希望します!