ドナルド・キーン先生

今朝、ドナルド・キーン先生が亡くなったというニュースを見て、ショックを受けました。

私が古典文学の世界に魅了されるきっかけとなった本がいくつかありますが、その中のひとつが、図書館で借りたキーン先生の『日本文学の歴史』(中央公論社。『日本文学史』に改題して中公文庫に収録)でした。その図書館は日本文学概論の本がカウンター近くの一番目立つ棚にあり、その棚の私の目線の先に美しい装丁の『日本文学の歴史』があって、何気なく手に取ったのが始まりでした。圧倒的な知識と深い理解による目から鱗の鋭い批評、明快な論理展開と説得力、そして何よりキーン先生のチャーミングなお人柄がにじみ出た文章と日本文学に寄せる誰にも負けない愛に惹き込まれ、夢中で読みました。全18巻の大作でしたが、読み終わるのが惜しい程の面白さで、すっかり古典の世界にはまり、古典全集を手当たり次第読んで行く、きっかけとなりました。

心ときめかせて参加した講演などでお話になっていたキーン先生は、穏やかながら、時々いたずらっ子のような表情でジョークを口にする、とてもチャーミングな方でした。そして、先生は文楽も支援されていて、文楽ファンの私は、そのことも、とても嬉しかったです。

東日本大震災の後、日本に帰化されたキーン先生。日本のことを日本人より考えて下さった方でした。供養も兼ねて、改めて『日本文学史』を再読し、先生の好きだった美しい日本文学の世界に浸りたいと思います。