国立文楽劇場 夏休み文楽特別公演 第一部 金太郎の大ぐも退治 赤い陣羽織

今年もよい子の皆様に紛れて、親子劇場を拝見しました。


金太郎大ぐも退治

以前、観たときは、幸助さんの金太郎、玉佳さんの大ぐも実は鬼童丸でしたが、今年は玉佳さんが金太郎で玉勢さんが鬼童丸。玉男一門の皆さんならではのカッコさです。その中でも一番、かっこいいのは鬼童丸。後半、蜘蛛の糸を投げるシーンは、お能の「土蜘蛛」で投げる糸に比べると分量的にちょっと見劣りするのですが、今年は新工夫が!そして最後は宙乗りです。

大ぐもは、前観た時は松前ガニのように見えた気がしたのですが、今回はどう見てもヒアリ。夢に出そうです。


床は清志觔さん率いる三味線もかっこよかったです。


赤い陣羽織

原作はオペラにもある『三角帽子』で、木下順二が翻案した作品です。松之輔が作曲したとのこと。パンフレットの鑑賞ガイドによれば、松之輔の作曲に当たり、木下順二から、「原作独特の台詞を完璧に残す」という条件が出されて、松之輔はそれを承諾したのだそう。木下順二文楽のこと、分かってないなー。文楽は詞が旋律型とつかず離れず響き合うところが面白いのに。


そういえば、以前観た同じ木下順二作の『瓜子姫とあまんじゃく』というのもあったけど、こちらは武智鉄二を演出に迎えた作品で、会話は東北弁のような方言を残しつつも、地の文が「である」調だったところが特徴的でした。『瓜子姫』の方が文楽への転換という意味ではいささかマシだったけど、どうしても東北弁の台詞を大阪のイントネーションで語る違和感が残りました。


木下順二の民話風の『赤い陣羽織』は、一見、文楽と相性がよさそうだけど、大成功とはいかなかったようです。詞章が義太夫と乖離しすぎていて、松之輔のような天才をもってしても、詞を義太夫節にのせられなかったのが、最大の原因な気がします。こういう試行錯誤を経て、今の新作があるのだろうなと思わせる、貴重な鑑賞機会でした。


とはいえ、松之輔の文楽らしさを出そうとする試みなのか、三味線の方では、他の曲で使われている旋律が沢山、使われていて、そこは非常に興味深いです。松之輔の苦心の跡をたどりながら聴くのも楽しいかも。