国立文楽劇場  初春文楽公演 第二部

国性爺合戦
 平戸浜伝いより唐土船の段
 千里が竹虎狩りの段
 楼門の段
 甘輝館の段
 紅流しより獅子が城の段
作: 近松門左衛門、 初演:正徳5年(1715年) 大阪 竹本座

http://www.ntj.jac.go.jp/performance/1265.html

またまた大阪まで来てしまった。もう、定義としては、立派な追っかけかもしれない。

お正月の文楽劇場は、舞台上部中央に「戊子(つちのえね)」という文字が大書きされた凧(生國魂神社宮司さんが書かれたもの)と、その凧を挟んで張子のにらみ鯛(二体のにらみ合う鯛)が飾られていた。にらみ鯛は、本物と思しき鯛が1F入り口にも飾られていた(劇場自体は2Fにある)。かつては上方の劇場に正月に飾られていた飾り物だそうだ。お飾りひとつとっても、上方と江戸は違いがあって面白い。

中日から昼夜の演目が入れ替わったため、第二部の国性爺合戦から観る。


国性爺合戦


趣向が沢山あり、見ごたえたっぷりの演目。

まずは、うそっこ異国情緒たっぷりの演出。「なむきゃらちょんのふとらやあやあ」「きんにゃう/\」等という、うそっこ中国語や、着ぐるみの虎、ぐわんぐわん鳴らす銅鑼、チャイナ?シンバルの音、弁天様&毘沙門天風フリル付きの服、ツメ人形の兵士達の逆毛のポニーテール等等。小さな手がかりをネタに想像力を総動員した「中国風」が面白い。

さぞ、江戸時代の人々も楽しんだに違いない。そういえば、去年見た出光美術館のセンガイ展では、1750年生まれ、博多聖福寺の住職だったセンガイさんも、和藤内(和唐内)の絵を描いていた。

もちろん、現在の私も楽しんだ。例えば、着ぐるみの虎(現代風な顔立ちの虎で違和感があるのだが、愛くるしいので許す!)が床の太夫に吠えたり、客席側に乗り出したり、ツメ人形の唐土の兵士達が虎がそちら方面に来そうになるとしっしっと追い払ったり、尻尾を捕まえたり、和唐内に降参して臣下になるべく月代を剃ってクシャミをしたり…。と、ここまで書いて、パンフレット付属の床本を確認したら、「日本流に月代剃って」云々の詞章がないバージョンだった。あれ、語ってなかったかな?ツメ人形がちょん髷にされてクシャミをしていたのは覚えているのだけど…。それとも床本校了後に演出が変わったのかな。


文雀さんの遣う錦祥女が、上品で美しかった。最初に楼門の二階の幕が開き錦祥女が現れた時、じわが来たくらいだ。老一官が父だと名乗りを上げ、錦祥女が自分が持つ父の面影残る絵と老一環を比べる時の姿がとても美しかった。手持ちの鏡で父の姿を映して絵と見比べるのだが、ちょうど、忠臣蔵七段目のおかるのよう。鏡で間接的に見るより直接見比べた方がはっきり分かるのでは、という疑問は置いておくことにする。多分、拡大鏡なのだ。

それから、紋豊さんの遣う和藤内の母も、良かった。縄で縛られていながら、和藤内に味方するのに身内贔屓のそしりを受けぬため錦祥女を殺そうとする甘輝から錦祥女を必死で守ろうとする様子に胸打たれた。最後は、この母も娘を殺して自分は生き延びては日本の恥、と自害してしまう。


日本といえば、平戸に残された栴檀皇女と小むつはどうしたのだろうか。お互い言葉が通じず、出された「おむすび」にびっくりしながらも、きんにゃう/\、仲良くやっていたのだろうか。

ああ、せめてもう一度、観たい&聴きたい。