由良之助の謡うは

仮名手本忠臣蔵の七段目に、力弥が密使として顔世御前の手紙を一力茶屋にいる由良之助に渡すシーンがある。そこで由良之助が「他に御口上はなかつたか」と問うと、力弥が「敵、高師直」と言いかける。すると、由良之助が力弥の言葉を誤魔化し「コリヤ、敵と見へしは群れ居る鴎、時の声と聞こへしは、浦風なりけり高松の。大きな声ぢや、密かに密かに」と、たしなめる。

この時、由良之助が咄嗟に謡うのは、謡曲の「屋島」の最後の詞章だ。今までここで謡曲を謡っているとは気がつかなかった。次回観る時は、気を付けねば。