国立文楽劇場 夏休み文楽特別公演 第1部 親子劇場 西遊記〜悟空の冒険〜

◆第1部 親子劇場
山田庄一=作/持田宗周=演出/竹澤団七=作曲/望月太明藏=作調
西遊記〜悟空の冒険〜
 閻魔王宮の段
 桃薗より釜煮の段
 火焔山より芭蕉洞の段
 祇園精舎の段

http://www.ntj.jac.go.jp/performance/1912.html

いやはや、親子劇場なんて、こっぱずかしくて絶対に行けないと思っていた。観るなら2部か3部だけど、今回はスケジュールが合わず、残念と思っていた。が、御堂筋線に乗って新大阪まで行く途中で、「大阪まで来て文楽を観ずに帰るとは何事ぞ」という、心の中のもう一人の自分にせっつかれ、詮方なく立ち戻った。そういえば、私も胸を張って大人とは言い切れないから、非大人、すなわち広義の子供だ、と自分で自分に言い訳して、本物のお子様達のお邪魔にならないよう、はじっこの席にそっと座らせていただき、観ることにした。


果たしてお話は面白いに決まっているので、特に感想を書くに及ばず。それより興味深かったのは、大阪のお子様達が、えらく大人しいこと。よくよく見ると、お子様より「元お子様」の方が多かったかも知れない。また、語りが容赦ない古語だし、この古語で話が分り、2時間席でじっとしていられるようなお子様でないと、観劇が難しいのかも。しかし、せっかくなら、夏休みなんだから、もっときゃーきゃー騒ぐ子供の声も聞きたかった気がする。


技芸員の方々も、もうちょっとはじけても良いのでは、という気がした。松竹座の菊五郎劇団の方がもっとはじけている。時事的話題もいいけど、子供って、毒々しいものほど魅かれるものではありませんか?今は文楽でおなかを抱えて笑った楽しい経験だけ覚えておいてもらって、将来、もう少し大人になった時に、本物の文楽を見て、本物の魅力にとりつかれる、というのでも良いような気がする。


ただ、子供が飽きないように随所に工夫がしてあり、それはとても感心した。たとえば、ややこしい話の際は、端の方にいる人形が何かしら面白いことをしたり、舞台転換時にインド音楽を流しつつミラーボールがぐるぐる回って気が散るのを防いでいたり、黒御簾だけでなく、スピーカーを使った効果音も使ったり(私は好きでないけど、子供はその方が好きでしょう)。


とまあ、結局のところ、本物のお子様達より大人年齢の私の方がよっぽど楽しんでしまったという訳で、恥ずかしくなり、小さくなって東の方に逃げ帰りましたとさ。