東京国立博物館 平常展

また東博行きたい病を発症したので、行って参りました。何ゆえ、こんなに東博が好きなのかしらん。

本館

特別室

特集陳列 装飾料紙と鑑賞料紙

料紙と言われて思い浮かぶのは、金箔や銀箔で霧が描かれていたり、様々な色の紙、破り継ぎ紙、そして宗達と光悦の最強ペアによる金泥、銀泥の下絵のあるものなどだろうか。ところが、他にも様々な種類があるだけでなく、その制作方法もとても凝っていて、奥が深いのだ。例えば雁皮紙というものがあるということを初めて知ったし、楮で出来た紙を雁皮紙に似せて作ったものもあった。それは顕微鏡で見ないと見分けが付かないほどだという。そして、色の付いた料紙は、紙の上に色を乗せるのではなく、紙漉きの時から染料となる草を漉き込むのだそうだ。今まで何気なく見ていた料紙もこのようにちょっとしたことを知った上で見てみると、随分、趣が違って見える。

また、料紙の特別陳列と言いながら、その料紙に書かれたものも興味深いし、表装の裂も素晴らしいし、満足、満足。

石山切(伊勢集) 伝藤原公任平安時代、12世紀

豪華な料紙。伝藤原公任筆ではあるが、平安時代に既にこのように華麗な料紙があったということは、源氏物語なども必ずや贅を尽くした料紙に書かれたのだろう。

古今和歌集(元永本)(こきんわかしゅう(げんえいぼん))( 国宝、平安時代、12世紀)

この日は、ちょうど、貫之の「君まさで煙絶えにし塩竃の、うら淋しくも見えわたるかな」の歌のところが開いていた。最近、融大臣づいている。

松浦宮物語(鎌倉時代、13世紀)

定家が若い頃に書いた物語とか。物語の内容と料紙の下絵が上手く調和している。
松浦宮物語-Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E6%B5%A6%E5%AE%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E
松浦宮物語の料紙
http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=B07&processId=02&colid=B2814

模本平家納経(田中親美模 大正時代・20世紀

模本といって軽く見ることなかれ。それはそれは華麗な料紙なのだ。平家が如何に繁栄したかということをまざまざと感じさせられる。


国宝室

国宝 一遍上人伝絵巻 巻第七(法眼円伊筆、鎌倉時代、正安元年(1299))

よく本では見かけるものの、本物を見たのは初めて。犬神人に見える人や、僧達の頭巾、憑かれたように廻り念仏を唱える人々等が思った以上に鮮明に見れて驚いた。一遍上人伝絵巻は一遍上人実弟が詞を書き、一遍上人の十周忌の8月23日に仕上がったのだという。平成15年〜16年に修復されたそうで、色合いが鮮やかだ。

東北院職人歌合絵巻(重文、鎌倉時代・14世紀)

職人の図で非常に興味深かったのだが、何の職業か、詞書を読んでもイマイチ分らず。

時代不同歌合絵巻(鎌倉時代・14世紀)

歌人の絵を描いた人は殆どの歌人の顔を見たこと無いはずなのだが、一人一人の表情が妙にリアルで、あー、そーゆー人、いるよね!と納得してしまう絵なのだ。例えて言えば、新聞の政治風刺画みたいな感じ。


8室

書画の展開 ―安土桃山・江戸

謡本(安土桃山時代天正2年(1574))

しまった、何の謡本だったのだろう。チェックするのを忘れた。それにしても安土桃山時代には、光悦謡本と似た装丁の謡本ができているのだ。


金春大太夫仕舞付(江戸時代、18世紀)

いくつかの謡曲の仕舞付をまとめて一冊にした書。装束などについても記載されており、思ったより細かく指定されているようだ。


9室

特集陳列 歌舞伎衣裳

色々、目から鱗の解説がありました。やはり歌舞伎は史実とは違うということを忘れてはいかんのだ。

小忌衣 浅葱天鵞絨地菊水模様(江戸時代、19世紀)

千本桜の四の切の義経とか、時今也桔梗旗揚の小田春永とか、金閣寺の松永大膳とかが来ている襟がフリルになっている衣装ありますよね。あれは、小忌衣(おみごろも)というらしく、歌舞伎でしか(文楽なんかも含むという意味だと思いますが)使用しない衣装で、高位の人物であることを意味しているそうな。知らなかった。織田信長とか、本当に着てそうなのに!

肩衣 茶地幸菱模様唐織(江戸時代、19世紀)

盛綱陣屋の佐々木盛綱とか新薄雪物語の園部兵衛(でしたっけ?)等、ゴーカな肩衣(かたぎぬ)を着けた登場人物がいるが、実際には、武士の肩衣は地味な色合いで材質は麻と決まっていて、あーゆーのは歌舞伎の中で発達していったものなんだそうである。うーん、確かに考えてみれば、ゴーカな肩衣を着けている人といって思い出すのは、歌舞伎やら文楽の登場人物ばかり…。


10室

浮世絵と衣装 ― 江戸 浮世絵

仮名手本忠臣蔵、初段〜討ち入りまで。葛飾北斎メインで大満足。北斎も役者絵を描くんだ、知らなかった。北斎に関しては、役者絵も面白いが、90才の時に書いたという、扇面散図(嘉永2年(1849)、八十八才という記述がある七面大明神応現図(江戸時代、19世紀) も興味深い。不思議な立体感のある絵なのだ。