国立劇場小劇場 5月文楽公演

国立文楽劇場開場二十五周年記念<第一部>11時開演
寿式三番叟   
伊勢音頭恋寝刃  
    古市油屋の段
    奥庭十人斬りの段
日高川入相花王   
    真那古庄司館の段
    渡し場の段
http://www.ntj.jac.go.jp/performance/2569.html

寿式三番叟

4月の大阪文楽劇場に続けての観劇。舞台の大きさも設えが違うので、4月とは違う印象。舞台奥の雛壇の一段目に三味線、二段目に太夫が乗っていた。音が篭ってちょっと残念。音の抜けや舞台のすっきり感を考えたら、能舞台の屋根の書割は、いらなかったかも。

4月は綱大夫は病気休演だったけど、今回、改めて聞けてよかった。舞は、特に、三番叟の勘十郎さんと玉女さんが双子のように同じタイミングで舞う様子に改めて感動した。第一部の中では寿式三番叟が一番見応えがあって楽しかった。


伊勢音頭恋寝刃

歌舞伎から文楽に移した演目。歌舞伎の方は油屋での万野やお鹿さんの会話が入れ事もあったりして、面白いのであるが、文楽は、そのようなところには重きを置いていないみたいで、さらっと済まされていた。そういう意味で、住大夫の語りや簑助師匠の万野を楽しみにしていたが、期待とはちょっと違っていた。しかし、お紺さん(文雀師匠)が綺麗なのと、貢さん(玉女さん)がすっきりしたいい男なのは、歌舞伎、文楽共通のようだ。

岩次が貢が手に入れた青江下坂と自分のなまくらとを取り替える時、歌舞伎では鞘だけ変えるので、「それじゃあ、バレバレじゃん!」と思っていたが、文楽では何と念には念を入れ、拵えの柄まで変えるので、これだったら間違えるのもごもっとも、と納得。人形だと、片手で付け外ししないといけないのに、玉志さんと左遣いの方が器用に付け替えてて感心してしまった。

十人切りのところは、寛治師匠と津駒大夫がテンポが良くてとても楽しめた。


日高川入相花王   

久々に観た紋寿さんの娘。あいかわらず、一所懸命な健気な娘だった。

しかし、真那古庄司館の段によれば、安珍は、ここでは朱雀帝の子、桜木親王となっている。これは、ますます、清姫の情勢不利。さすがに親王はまずいでしょう。とゆーか、清姫は夏に京で安珍を見た時に一目惚れしたというけれども、その時の姿は、きっと修行僧姿ではなく、皇族としての姿だったのでは?それでも父に許婚といわれ、本気にしてしまうのは、恋のせいで盲目になったから?

渡し場の段では、早替りで全身白地に金の鱗文様の振袖姿でガブの蛇体に。龍女は仏教では成仏の一歩手前なのに、何故にここでは執念が高じて蛇になるのかと思ってから、龍と蛇では少し違うことに気が付いた。
多分、イブにりんごを食べるよう教えるとか、頭から蛇が生えているメドゥーサのように、多分、「女性」と「蛇」と「邪悪」というものを結びつける考えが古代からあったのだろう(女性としては全然うれしくないが)。
(5/24追記:仏教では蛇は怒りを象徴するもので、他に豚が無知、鶏が欲望を表し三毒というのだとか。)
ちなみに東南アジアでは龍はトカゲとかワニを元に考えられたとみられるそうで、確かにワニは蛇と違って堂々としていて悪者の印象はない。

そこまでして安珍に会おうとする清姫を観てたら、もうどうなってもいいから、とりあえず、ここはがんばって!という気持ちになり、盛大に拍手を送りましたとさ。