国立劇場小劇場 9月文楽公演 第三部 天変斯止嵐后晴

<第三部>18時30分開演
シェイクスピア=作「テンペスト(あらし)」より
山田庄一=脚本・演出
鶴澤清治=作曲
天変斯止嵐后晴(てんぺすとあらしのちはれ)
http://www.ntj.jac.go.jp/performance/2789.ht

ml

なかなか面白かった。

テンペストは未読だけど、やっぱりシェークスピアは偉いな。各登場人物にそれぞれ動機があって、そのお陰で登場人物それぞれの思惑が絡み、話が面白くなる。

また、かなり翻案されているようだけど、もっと翻案されたっていいと思う。たとえば、阿蘇左衛門が十数年の積もり積もった遺恨を晴らそうとした割には、すぐに筑紫大領と和解してしまうのは、欧米人なら結構ありえそうだけど、日本人の話だと何となく腹に一物ありそうで胡散臭い。もっと日本人らしく、お家のために仇討ちとか、ともかくお江戸まで行って先代萩みたいにお白州で対決とか、そんなのだっていいかも。それでも、心中物とか酒屋の段とかみたいに、今の人間にはイマイチ理解しがたい演目よりはずっと分かり易かった。

最後、阿蘇左衛門がいかにもシェークスピアらしい台詞をいい、私はその手のものは(特に日本人がやると)気恥ずかしく思ってしまうのであるが、万来の拍手でした。白ける危険もありながら、さすがプロです。


内容とは関係ないが、冒頭、清志郎さんの弾くお琴の奏法が面白くって釘付けでした。幕の開く前から音が聞こえてピアノかと思ったのだが、実は、お琴の弦をピアノのハンマー(ピアノの鍵盤の打鍵に連動してピアノ内部で弦を叩くハンマーのこと)に似たスティックでマリンバのように演奏していたのだ。この奏法を考えた人、すごい。これはお琴の世界では結構用いられる奏法なのだろうか?あのスティックを手作りするのは難しいと思うのだけど。とにかくその奏法の斬新さに感銘を受けました。その他、この演目では、お琴が大活躍でした。シェークスピアとお琴は合うようだ。

それから、ますます内容と関係ないけど、呂勢大夫の見台が、漆の黒地に螺鈿(多分)で沙綾形の文様が描かれていて、こちらも目が釘付けになりました。間違いなく、今月最もインパクトのある見台。大夫さんの見台を見るのは文楽鑑賞の楽しみの一つだけど(蒔絵のみか蒔絵にアクセントで螺鈿が施されているものがほとんどだが、一つ一つ違って本当に個性的)、見台ウォッチャーとして、もっとしっかり見台をウォッチしなければという使命感に駆られた(?)一件でした。