府中の森芸術劇場 文楽地方公演

人形浄瑠璃文楽
〜わかりやすい解説付き〜昼夜二回公演
【夜の部】 
解説
絵本太功記(えほんたいこうき)        
  夕顔棚の段(ゆうがおだなのだん)       
  尼ケ崎の段(あまがさきのだん)        
日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)        
  渡し場の段(わたしばのだん) 
2009年10月17日(土) 13:30/18:00開演
http://www.fuchu-cpf.or.jp/theater/play/20091017_bunraku.html

どうも京王線が苦手で、多分一度もまっすぐ府中に来れたことがない。この日も橋本行に乗ってしまったらしく、稲城駅でまた間違った電車に乗っていたことに気が付いた。余裕があったので遅刻せずに済んだが、何度やったら気が済むのだろう。あまりに情けなかったので、だだっ広い稲城駅のホームで文楽太夫みたいに「フフハハフフハハフハハハハ!!」と嗤おうかと思った。やばいやばい。


解説

一輔さんの解説。今回は特に人形も出さずに短縮バージョン。

一輔さんが三人遣いになったいきさつを話をしていた時、ふと思ったのは、そういえば、昔の絵を見ていると、人形浄瑠璃の絵は大抵、人形が棒立ちで手もだらんと下に下がっているか、肩の高さにあげているものが多いことを思い出した。三人遣いの絵でも袖を噛んで泣いている女形とか、見得をしている立役とかの絵はあまり記憶にない。なんとなく、三人遣いになった途端に今のように人形がまるで人間のように動くようになった気がしていたけど、ひょっとすると、最初はそれほど大きな変化はなく、だんだんと人間らしい所作が増えていったのかも、などと思った。


絵本太功記

三味線(清志郎さん)が、勇壮なものかと思いきや、なかなか華麗な手で気に入ってしまった。夕顔棚の段は何故に夕顔と思ったが、さつきの家の貧しさ、尼崎の段での真柴久吉の千成瓢箪を利かせてあるということのようだ。

尼崎の段は、清介さんの三味線が圧巻。途中、私がみた限りでも三回も三味線の糸が切れて替えていたくらい、激しい演奏で、絵本大功記の物語が持つ重厚かつ豪快な世界がその三味線一本で雄弁に描かれていた。

人形の方は、勘寿さんのさつきが格も情もあって良かった。ますます文楽の婆が好きになってしまう。また、一輔さんの武智十次郎も凛々しくて素敵。勘十郎さんの操は、さすが素晴らしかったけど、少し考えさせられることもあった。十次郎が亡くなった時、全身で嘆く態となるのだが、戦国時代の、武智光秀の妻のような立場にある人は、前後不覚になって嘆くことさえ自分に許さないだけの覚悟を持っている気もしないでもない。色々考え方があると思うが、私だったらもう少し抑えた演技により妥当性を感じるかもしれない。


日高川入相花王  渡し場の段

地方公演の景事の三味線というと、08年3月の千本の「道行初音旅」が印象深くて、「あの『道行初音旅』よ、もう一度!」と思っていたのだが、今回の「日高川入相花王」の「渡し場の段」も、息が合っていてメリハリもあり楽しかった。

人形は、簑二郎さんの清姫が、怒り狂いながらもどこか品があって好き。普通の人間には怒りながらも品があるなんて、なかなか出来ないことです。自戒。


さてさて、来月は文雀師匠の葛の葉。楽しみだけど、果たして無事大阪に行けるのだろうか。神様、良い子にしますので、どうか私にチャンスを下さい!