根津美術館 新・根津美術館展

新創記念特別展 第1部
新・根津美術館展 国宝那智瀧図と自然の造形
2009年10月7日(水)〜 11月8日(日)
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html

新しくなった根津美術館に行く。本当はこの日の昼は、文楽地方公演の昼の部で府中に行こうと思っていたのだけど、気が付いたら満員御礼。呆然としたが、捨てる神あらば拾う神あり。根津美術館ドナルド・キーン氏の特別講演会に当たって、キーン氏の講演を拝聴できることになった。

ドナルド・キーン氏の講演は、「日本美術と自然」というタイトル。時候の挨拶の話から始まって、日本の和歌が自然の季節による移り変わりを主題とするものが多いこと。和歌集は春夏秋冬の順に並べられ、その中でもまた時期の順に並べられること。お能は季節を大事にして、その季節に演じられる。日本画は自然を描く。自然は念を入れて描くのに、人の顔は詳しくは描かれない。物語も同じ。誰も光源氏の顔を知らない…etc、etc。

私にとっても好きなモノやコトの話ばかりで、しみじみと楽しいひとときだった。


講演が終わった後は、ちょっとだけ、展示を観る。那智瀧図(国宝、鎌倉時代 13〜14世紀、絹本着色 1幅)は、圧巻。中国文人画風の山奥に、大和絵風の滝の水が滔々と流れる。


それから、古筆。石山切戊辰切本阿弥切等等。宗達風に金泥の版画で羊歯の下絵を描いた、本阿弥光悦自身の和漢朗詠抄もある。

饕餮には顔の絵があるなんて知らなかった。良くみてみると、何となく顔になっている。

展示室6には宗旦の茶杓。宗旦はお能の曲目を銘にすることが多いというけど、この茶杓の銘もやはりお能からとって「よろぼうし」。藤組丸炭科(炭を入れる入れ物)に炭、野雁羽箒鉄環桑柄火箸がきれいにセットしてあるのを見たら、以前ちょっとだけお茶を習っていた時の先生が、慎重に炭を盛っている後姿を思い出した。


根津美術館。休館していた三年半の間に日本美術の素晴らしさが以前より少しだけよく分かるようになりました。前よりも一段と好ましく感じる新根津美術館は、今後は頻繁に通ってしまいそうです。