国立劇場 2月文楽公演 第一部(その2)

<第一部>11時開演
花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)
    万才・海女・関寺小町・鷺娘   
嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)
   花菱屋の段
   日向嶋の段
http://www.ntj.jac.go.jp/performance/3159.html

多分、一部が一番好きだったかも。床も大迫力で人形も実力派揃いで堪能しました。

花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)
    万才・海女・関寺小町・鷺娘


また清治師匠の率いる三味線軍団のレジェンドを目撃して(聴いて?)しまった…。清治師匠の三味線のソロは背筋がぞくぞくするほど素晴らしかったし、三味線軍団の一糸乱れぬユニゾンも最高。早いパッセージの音の粒が揃っているだけでなく、クレッシェンドもデクレッシェンドも、アッチェルランドもリタルダンドも、時折入る清治師匠の掛け声だけで寸分狂わず揃うのだからすごい。曲自体も様々な要素を含んでいて変化に富んでいて聴いていて、とても楽しい。

それから呂勢大夫もいいなあ。非常に複雑なフシを(もしそのまま採譜したら三十二分音符やらトリル等を多用した真っ黒な楽譜になるだろう)、フィギュアスケートみたいにコントロールを効かせて語っている。一方、呂勢大夫の隣の咲甫大夫はロングトーンが多い。同じ曲でこれだけ違うというのも興味深い。個人のオリジナルってことは有り得ないだろうから、二人のフシの系統が違うということなのだろうか。二人を逆の配役にして聴き比べたら面白そうだけど、とりあえず、私の音楽の好みはモーツアルトとかドビュッシーとかラフマニノフとかで音符が多いほど好きなので、呂勢大夫バージョンは気に入っております。


一方、人形の方は、関寺小町以外で興味深かったのは、まず「海女」。お能に出てくる海女=松風姉さんは、都に戻ってしまった在原行平を恋しすぎて物狂いとなり、その辺の松の木を行平と思い込んでアタックをかけ、妹の村雨に止められるという、狂気と紙一重の物狂おしい女性。けれども清十郎さんの海女は清純な乙女が初恋について色々夢見心地に語るという感じで、なかなか面白かった。舞台装置について、前回大阪で観た時は、確か冒頭は暗転か暗幕か浅葱幕かで背景が覆われていて大夫だけが見えるようになっていて、「もとより鼓は波の音」というところからぱっと背景の波が見えるという演出になっていたが、今回は最初から波が見えていた。実際、詞章の冒頭部分は海とは関係ないので、「もとより鼓は波の音」のところから波が見える方が詞章とリンクしていて劇的な印象を与えるように思えるけれども、今回そうしなかったのは、暗転したりして舞台の演出をすることを厭う伝統的な考え方なのかな等と色々考えてみたりした。

それから、和生さんの鷺娘。文雀師匠とはまた違う、素敵な娘。

なぜか、嬢景清八嶋日記まで進まなかったので、このメモ、続きます。