日経ホール KANJURO 人形の世界

桐竹勘十郎 プロデュース
KANJURO 人形の世界
◆「義経千本桜」より 義太夫「知盛」
トーク文楽の魅力」 
  古典芸能としての「文楽」の魅力を人形の実演を交えながら探ります
◆「花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)」より チェロ独奏曲による「関寺小町」
中丸三千繪氏(ソプラノ歌手)とのトーク
◆「花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)」より 義太夫「鷺娘」
http://www.nikkei-hall.com/event/?act=detail&id=203

勘十郎さんが関寺小町をされるということで、その魅力に抗し難く、行って参りました。
さすが芸能一家に育った方だけあって、心底エンターテイナーで、楽しい仕掛けが一杯でした。


◆「義経千本桜」より 義太夫「知盛」

私の大大大好きな二段目より。六道の沙汰のところをやってくれるのかと思って楽しみにしていたら、渡海屋の最後の知盛の出陣のところでした。さすがにオープニングで幕が開いたと思ったら血みどろの知盛では観客が引くか。

詞章は一部謡曲から引かれている訳ですが、お能でいうと後場のシテ知盛の霊の出のところの詞章なんですね。それが文楽では前場にあたる「渡海屋」の段の最後に使われているというのも面白い。

呂勢さんが、喉を痛めていらっしゃったようなのに渾身の語りで、ひょっとしてこのままこめかみあたりの血管がぶち切れて倒れてしまったらどうしようと余計なお世話な心配をしてしまう位の迫力なのでした。しょっぱなから勘十郎さんの人形と呂勢さん&燕三さんの床の力と力の激突という感じで大変楽しい始まり方で大満足でした。


トーク文楽の魅力」 

珍しい勘十郎さんの足遣い。頭巾をかぶってらっしゃって顔は見えなかったのだけど、いやに堂々とした桜丸の足だなあと思ったらやはり勘十郎さんの足でした。さすが!


◆「花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)」より チェロ独奏曲による「関寺小町」

黛敏郎のチェロ独奏曲の「文楽」というのが使われたらしい。最初、チェロがピチカートでヲクリのメロディを弾くのだ。これは黛敏郎の曲もそうだけど、勘十郎さんの試みも他の人は二度と使えないやったもん勝ちのアイディアの勝利。振りは二月公演の文雀師匠の振りと同じで、詞章でいうと、「うつろふものは世の中の人の心の花や見る」ぐらいまででしょうか。


中丸三千繪氏(ソプラノ歌手)とのトーク

中丸さんのお話で面白かったのは、オペラに「イリス」(多分、英語で言ったら"Iris"、日本の「あやめ」のことを指しているのでしょう)という日本が舞台の作品があり、その中に、旅芸人の人形劇団が女の子をさらっていってしまう場面があるというお話。勘十郎さんが、「それは文楽座ではないと思います!」と仰っていたが、多分、中世の傀儡師や人さらい(能狂言では普通に出てくる)の話がごっちゃになっているのではないかと思う。何で読んだか忘れたけど、19世紀末のパリには日本の美術品(錦絵、工芸品等々)を販売する日本人の画商が居て、ジャポネスク趣味の文化人の間では彼らを通じて日本文化についても伝わっていたというので、そのような知識が背景となって出来たオペラなんではないかと思った。「あやめ」という歌詞をタイトルにしているところからして、どちらかというと文楽よりお能の影響が強そう。


◆「花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)」より 義太夫「鷺娘」

二月公演の和生さんの「鷺娘」は楳茂都流だそうだけど、勘十郎さんは藤間流とのこと。そういえば、文雀師匠は楳茂都流だと大阪公演のパンフレットのインタビューに書いてあったなあ。それに勘十郎さんの「鷺娘」は玉三郎丈の「鷺娘」と似てた気がするなあ。