宇都宮市文化会館 文楽地方公演 昼の部

解説
卅三間堂棟由来 平太郎住家より木遣音頭の段
本朝廿四孝 十種香の段
奥庭狐火の段
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春の地方公演で土日の関東近県での公演といったら宇都宮しかなかったけど、何と行っても文雀師匠の八重垣姫を観ない訳には行かないので、東北新幹線に乗って宇都宮まで行ってしまいました。結果的には、文雀師匠をはじめとして他の皆様もとても素敵なパフォーマンスで大大満足でした。


卅三間堂棟由来 平太郎住家より木遣音頭の段

そーいえば、以前、1月に三十三間堂の近くを通った時、通し矢の会と共に頭痛封じという楊枝のお加持というのをやってたなあ。その時はお向かいの京博で京都御所の御物の展示をやっていたのでふらふらとそっち側に行ってしまったのでした。三十三間堂も行っておけばよかったな。それにしても、柳(からの抽出成分であるサルチル酸)が頭痛に効くから柳の精ってコンセプト考えた人、面白い。
柳の精というだけあって、詞章もお能風で美しい。けれども、お能だったら「呼ぶ声も散り来る柳の葉隠れに、形は消えて失せにけり。」で終わるところを、浄瑠璃ではその先に木遣音頭で切り倒された柳(これが大きいのだ!あんなに大きな柳の木ってあるのだろうか)が動かないところ、みどり丸が木遣音頭を歌うとそれに答えるように柳の木が動くのだった。ここが泣けるのだ。

和生さんのお柳、玉也さんの平太郎、蓑紫郎さんのみどり丸がそれぞれ素敵でした。和生さんはこういうちょと憂いのある優しい女性がいいんですよね。平太郎は所作が非常にきっぱりとしているので、平太郎がすっきりとしたいい男に見える。


本朝廿四孝 十種香の段&奥庭狐火の段

文雀師匠の八重垣姫、本当に可愛らしかった。なんだかハロー効果で文雀師匠まで可愛く見えてしまうくらい。文雀師匠が遣うと、浄瑠璃の詞章に合わせて人形が動いているようには見えず、人形に浄瑠璃が合わせているように見えるのが不思議。「十種香」ではおっとりとした様子だった八重垣姫が、「奥庭」では激しい動きとなる。気合の入った床と共に、文楽を観る喜びに浸りました。

千歳大夫の語りも二月の国立劇場に続いて良かった。そして何といっても清志郎さん&龍爾さんの奥庭の気合の入りっぷりがすごかったのですよ。ああ、三味線中心、ツレ弾き特集の素浄瑠璃ってやってくれないかな。

というわけで、帰りは接続が悪すぎる宇都宮のバスやら新幹線やらを一時間近く吹きっさらしの中でお待ち申し上げておったわけですが、そこかしこで「お姫様が素敵だったわねー」という感想をいっているおばさまやお子ちゃま達一人ひとりに「そうでしょ、そうでしょ!」と言いたい衝動に駆られながら、気分良く家路についたのでした。