国立文楽劇場 夏休み文楽特別公演 第3部

関西元気文化圏共催事業 夏休み文楽特別公演
◆第3部:サマーレイトショー 18時30分開演
菅原伝授手習鑑すがわらでんじゅてならいかがみ
 寺入りの段
 寺子屋の段
近松門左衛門=原作 鶴澤清治=補綴・補曲 藤間勘吉郎=振付
日本振袖始にほんふりそではじめ
 大蛇退治の段
http://www.ntj.jac.go.jp/performance/3437.html

菅原伝授手習鑑 寺入りの段 寺子屋の段

文雀師匠の千代を観られて、大阪に来た甲斐があったというものでした。

「利発らしき女房の七つばかりな子を連れて」という出のところから既に千代が引き裂かれんばかりの思いで小太郎を連れて来ているということが分かり、また、「ちよっと隣村まで」と千代が寺子屋を出ていこうとすると、「かヽ様、わしも行きたい」と縋りつく小太郎に、胸が一杯になってしまうのに、振り払って叱らなければならない千代。普段とは違う尋常でない気配を察して思わず母親の千代に縋りついた小太郎。千代は本当は小太郎の手をとってそのままどこかに逃げてしまいたかったに違いない。もう、冒頭から観ている私までうるうると来てしまうのでした。

そして玉女さんの松王丸*1。私は玉女さんの松王丸が大好き。肉親と縁を切り、子供も菅秀才の身代わりに差し出さなければならなかった身を切られるような悲劇をじっと耐えつつも、小太郎の最後の様子を聞き、「アノにつこりと笑ひましたか」と泣き笑いする松王丸。

また、もしこの夫婦だけにスポットライトが当たっていたら殺伐とした悲劇となるところを、源蔵と戸浪という松王丸と千代の悲嘆を受け止める人達がいることで、そこに一筋の救いを見出すことが出来るのだ、という気がした。

やっぱり、「菅原伝授手習鑑」は名作だということを再確認しました。


日本振袖始 大蛇退治の段

冒頭からお能でいう「上ゲ歌」風の節の付いた謡ガカリで始まって、うれしくなってしまう。もちろん、謡ガカリは荘厳な雰囲気を醸し出すための演出であって、「文楽ファン」兼「能楽ファン」の密かな楽しみのためではないってことはよーく分かっているけど、今も昔も、義太夫節と謡の両方が好きな人達は皆、きちんと謡らしく謡われる謡ガカリが好きに違いない(と思いたい)。

と、ここまでは良かったのですが、実は、「寺小屋」が終わったあたりから、ここ数週間忙しかったせいもあり疲れがどっと出たりもして、ほとんど集中できず、ぼーっとしておりました。

おぼろげに覚えているのは、(1)岩長姫が本行の「道成寺」を思わせる迫力と華があり素敵だったこと、(2) スサノオを遣う玉也さんが槍(?)で大蛇の頭をボコボコにしていて、立ち回りにおける玉也ファンの期待を裏切らなかったこと、(3)清治師匠の三味線が相変わらずほれぼれするほど素晴らしかったこと、(4)その三味線軍団も良かったこと、などなど。

あまりに中途半端な観賞だったので、リベンジで翌日も観て最終の新幹線で帰ろうかとも思ったけど、翌日は翌日で夏祭を観終えたらもう限界になってしまい、再度観ることは断念。

というわけで、国立劇場さん、是非に、東京での再演をお願いする次第にてござりまする。

*1:当初、玉女さんのお名前ではなく別の方のお名前を書いておりました。申し訳ありません!&ご指摘いただいた、ぽぽ様、ありがとございました!