芸能花舞台 傾城恋飛脚 新口村の段

NHK大阪でスタジオ収録された、嶋師匠と清治師匠の新口村の段の素浄瑠璃

勢いと即興性を大事にされる嶋師匠は、やわらかで愛嬌のある語り。かたや清治師匠は、緻密に計算された、切先鋭い三味線。どちらかというと正反対な個性のお二人の共演が、一体どうなるのか、楽しみにしていた。果たしてパフォーマンスは――アプローチが全く異なる語りと三味線を同時に聴くという、スリリングな体験だったのでした。…とかなんとか書くと、いかにもお二人がバラバラだったように聞こえてしまうかもしれないが、全然そんなことはなかったのだ。こういう場合は、お互いに譲らず演奏自体が破綻してしまうか、白々とした空気が流れそうな気がしてしまうけど、実際のお二人の演奏は、お互い妥協しないながらも、共演として成り立っていて、さすがの一言なのでした。

せっかくの折なので(?)、清治ファンとして清治師匠を礼賛してしまうと、私は清治師匠の切っ先鋭い音色も、人間業とは思えない撥さばきも好きなのですが、何といっても、場面の切り替わる時の、ワンフレーズで情景も空気感も何もかもすっかり変えてしまう、あの三味線が好きなのです。本当にすごいと思う。今回の新口村でもそんな箇所が何ヶ所かあり、うっとりさせていただきました。