国立劇場小劇場 文楽鑑賞教室 Aプロ

社会人のための文楽鑑賞教室
 12月3日(金)・10日(金)6時30分開演(8時55分終演予定)
 伊達娘恋緋鹿子 火の見櫓の段
 解説 文楽の魅力
 三十三間堂棟由来 鷹狩の段 平太郎住家より木遣り音頭の段
http://www.ntj.jac.go.jp/performance/3710.html

前の週にBプロを観て、今回はAプロを観た。同じ演目を別の方がやるのを同時期に観ると、同じ所作になっているところや異なる所作のところが分かって面白い。ただ、都合により途中から拝見したので、紋臣さんのお七と相子さん・清丈さんの解説は観ることができず。残念無念。


三十三間堂棟由来 鷹狩の段 平太郎住家より木遣り音頭の段

Bプロの勘十郎さんのお柳も良かったけど、和生さんのお柳も素晴らしかった。今年の春の地方公演のお柳はもっと草木的なお柳だった気がするのだけど、今回のお柳はもっと情を表に出していて、平太郎やみどり丸への愛情や別れの辛さがこちらにまでじんと伝わってくるお柳なのでした。お柳は元の柳が切り倒されるが故に愛する家族と別れなければならないけれども、三十三間堂の棟木となって観音様との「法の縁」を結ぶというのも、江戸時代ならではの大人のための童話という感じ。哀しいだけでなく救いがあるのがしみじみと良いのでした。何度でも観たい、好きな演目です。

ところで、始まる前に相子さんの解説を聞きながら舞台に設置された登場人物の相関図のパネルを眺めていたところ、前週にAプロを観たときは、「白河法皇」を完全に「後白河法皇」と勘違いして見ていたことが発覚。ということは、今まで三十三間堂後白河法皇が創建したと思っていたのに間違って覚えていたんだ、と一人静かにショックを受けた。がしかし、家に帰って確認したところ、三十三間堂自体は後白河法皇が作ったということで間違いなかった。あー、びっくりした。
この浄瑠璃の本当の外題は「祇園女御九重錦」といい、その三段目を切りだして「三十三間堂棟由来」としているらしい。ということは、恐らく『平家物語』の「祇園女御」のエピソードを核として五段物の浄瑠璃を書こうとしたはいいけど、なんせ白河法皇や忠盛、祇園女御のエピソードで浄瑠璃に仕立てられるようなものはそんなにないのでたちまちネタ切れとなり、しかたなく、恐らくサイドストーリーであろう三段目は「白河」つながりで後白河法皇のエピソードを出してきた、というようなところでしょうか。「鷹狩の段」に白河法皇が登場するというのも、後白河法皇が熊野御幸を何度も行ったというエピソードを下敷きにしているのかもしれない。