赤坂区民センター 赤坂花形文楽

赤坂花形文楽
・素浄瑠璃「一谷嫩軍記〜組討の段
  豊竹芳穂大夫、鶴澤清公  

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・花形おしゃべり文楽トーク&デモ)
文楽「壺阪観音霊験記」
 豊竹呂勢大夫、鶴澤藤蔵、吉田幸助、吉田一輔

楽しい座談会だったけど、これを書いている1ヶ月経った今となっては、何を言っていたか思い出せない…。

辛うじて思う出すことが出来るのは、技芸員の方は、入門当時の年齢で精神年齢が止まってるとかいう話。しかし、話を聞いて、それだから、七十代、八十代でもお元気で活躍されるんだろうなと思った。元メジャーリーガーの松井とかサッカーのカズをはじめとするスポーツ選手のように、三十代、四十代で悟っちゃったら、多分、七十代、八十代まで現役というのはちょっとむずかしいんじゃないだろうか。

壷坂については、呂勢さんの話では、壷坂は新しい時代にできたにもかかわらず、文楽系と彦六系という系統があるのだとか。よく分からないけど、例えば、初演は彦六系だったとして、大人気になって文楽座でもやろうとしたけど、まんま演奏しては文楽座の沽券に関わるとかいうことで、文楽座流にアレンジしたとか、そんなことなんでしょうか。それでもって、私は自分が聴いたのがどっちだったのだろうか?分からん。

それから、呂勢さんが清治師匠に、お里は、ほわんとした感じでやった方が良いと言われたという話。たしかに、壺坂を聴いてイラっとした時のことを考えると、沢市が超ネガティブ思考でうじうじ言い、お里がそれを深刻に嘆いていたやつだった。さらに、一番良かった女義の駒之助師匠の壺坂は、お里のみならず、沢市も、のほほんというか、ほわわんという感じで、なんというか、思いやりに満ちた善良な夫婦のお話という感じだった。

また、藤蔵さんが、お里が盲目の沢市に杖を渡す時の実演(沢市の手に優しく杖をもたせる)をしたのですが、これが歌舞伎役者顔負けの演技力で、さすが、代々続く芸能一家出身の御曹司という感じでした。

壺坂は、呂勢さん、藤蔵さん、幸助さん、一輔さんのそれぞれの良さが出た、華のある、素敵な舞台でした。会場の大きさの都合上、崖が、「そんなとこから落ちても怪我すらせんわ!」という低さだったのが、玉にキズでしたが、まあ、結局は助かるのが分かっているので、いいのです。

最後に、幸助さんが、「還暦まで花形文楽をやるので応援して下さい」という趣旨のことをおっしゃった。私は歌舞伎を見始めた時、歌舞伎座で足の不自由そうなおばあさんが、やっと席に座って、熊谷陣屋で台詞を唱和して涙を流しているのを見て、ああ、伝統芸能ってこうやって、死ぬまでずっと繰り返し繰り返し見続けるものなんだなと思った。そして、文楽を見るようになって、私は、文楽であのおばあさんのように、熊谷陣屋を見て、涙を流すおばあさんになりたいと思った。こうやって、花形文楽に出演されている方々を拝見すると、どうも、私はおばあさんになった時、これらの方々の熊谷陣屋を観ることになるらしい。実際、呂勢さんの熊谷陣屋は5月公演で既に実現してしまったし。

これから皆さんがどう変わっていくのか、私自身もどう変わっていくのか、死ぬまでずっと繰り返し繰り返し見続けて見届けたい、という小さな望みが、どうか叶いますように。