ETV特集「スーパー能〜650年目の革新」

何気なくTVをつけたら、先日公演があったスーパー能「世阿弥」のメイキングを特集したものをやってた。1時間番組で既に放送開始後30分はすぎていたけれども、なかなか興味深かった。

スーパー能を観た時は、詞章を含めて、かなりお能の約束事を忠実に守ってるという印象があって、梅原猛氏も実は結構お能を観るのかしらん、なんて思っていた。しかし、実際は、梅原氏の書いた台本を、玄祥師が半分以下の分量にして、台詞も地謡も全面的に結構手を入れていたようだ。さもありなん。

試演を含め、舞台の内容も一部、放送されていたが、改めて聴くと違和感のある詞章も多い。例えば、公演の時も違和感があったのは、世阿弥の「政治には政治の、芸には芸の権限がある」という台詞。これは、もし世阿弥がそういう考えの人だったら、ごく早い段階に将軍に睨まれ疎んじられ、今の世にお能は伝わっていない気がする。それ以外にも、何かしら違和感を感じるが、公演の時には、それほど違和感は感じなかった。このメイキング映像を観る限り、何度も何度も詞章に検討が加えられていて、そうした過程を経たものだけに、生の舞台では、演者の方の芸の力で説得力を持って、観ている側に響いてきたということだったのかも。

それから、この特集の制作には、どうもお能に詳しい人はかかわっていなかったようで、関係者の言動に対するナレーションが、イマイチ本質を外している部分があったりして、そこはちょっと残念だった。例えば、ワキ方で越智役だった宝生欣哉師が「(ワキというのはほとんど僧侶の役で)新作能に参加しても大体、僧侶の役なので、役作りを経験したことがなく難しい」という趣旨のことをおっしゃっていて、ナレーションもそれを真に受け、演者全員が全員、全く未知の体験をしているというような話になっていた。しかし、あれは、確かに半分はホントかもしれないが、半分はどう考えてもご謙遜ではないだろうか。確かに、例えばワキは僧が多いけど、僧といっても大僧正から殆ど遊行の徒まで様々だし、もちろん、他にも様々な役柄がある。それに、玄祥師をはじめとしたこの能を演じた方々は、皆さん、新作能の経験の豊富な方々ばかりだ。

それから、細かいことだけど、ナレーションで玄祥師のことを梅若さんといい、欣哉師のことを宝生さんと言っていたのも、ちょっと面白かった。梅若さんなんて、絶対他にもう一人出てくるよ、どうするの?と思ったけど、どうももう一人の梅若さんは画面のはじっこにしか映らなくて、梅若さん同士の会話(?)のシーンは無かったのがちょっと残念。

さらに私にとって最もゆゆしき問題だったのは、地頭の大槻文蔵師について、全然触れられていなかったこと。ファンとしては、とても心外です。もう、映像も米粒ぐらいにしかうつらないし、ちょっとアップになったと思っても、ピントが玄祥師の持ってる謡本にあっていて、文蔵師の顔はピンぼけだったり。もー、文蔵師にインタビューもせんとは!わかっとらんな、NHKは!!