第十七回日本伝統文化振興財団賞 豊竹呂勢大夫[DVD]

卅三間堂棟由来 ー 平太郎住家より木遣り音頭の段。去年、NHK FMで同じく平太郎住家より木遣り音頭の段が呂勢さんと清治師匠のお二人で演奏されてそれも素敵だったけど、それとはまた全然別物といっていいくらいの素晴らしい演奏です。

この物語に出てくるお柳は、春風になよなよとなびく柳の枝のよう。詞章にも、「雨露の恵み」、「春や昔の春」(月やあらむ春や昔の春やらぬわが身ひとつはもとの身にして・在原業平朝臣古今集)という優しい詞や、うららかな風光明媚な風景を思い起こさせる「和歌の浦」や「玉津島」という歌枕、塩釜、熊野権現など、柳の柔らかでみずみずしいイメージと響きあう詞が散りばめられている。

そんなお柳と平太郎・みどり丸親子、母との哀しい別れ、草木成仏を願い回向を頼むお柳。柳の大木は卅三間堂の棟木となるために切り倒されるが、引けども動かず、平太郎のもの悲しい木遣り音頭に感応して動き出す。

浄瑠璃の王道ではないかもしれないけど、こういった古浄瑠璃御伽草子の世界を引きずった、切なさと優しさの同居する物語も、好き。

DVDの呂勢さんの見台は、同梱の解説書によれば、人間国宝の漆芸作家、室瀬和美さんの作品とか。尾形光琳紅白梅図屏風を彷彿とさせる光琳波に竹林のようにも見える色とりどりの縦縞が片身替りで配す図柄。曲線と直線との対比が陰陽思想を思い起こさせる。このようなハレの機会に相応しいデザインではないでしょうか。