六本木ヒルズ にっぽん文楽in六本木

六本木ヒルズヒルズアリーナ
2015年3月19日〜22日
12:00〜13:30、18:30〜20:00
『二人三番叟』、『日高川入相花王』「渡し場の段」
http://www.nipponbunraku.com/event/index.html

野外に設営する移動式「檜舞台」で、飲食を楽しみながら文楽に親しもうという企画。六本木ヒルズを皮切りに、この後は大阪に行くとか。そして、四月に二代目玉男を襲名される玉女さんが玉女というお名前でお役を演じる最後の公演でした。

観る前は、『二人三番叟』は好きだからまだしも、『日高川』とかそこまで面白くないし、飲食しながら観るというのもピンとこないし、あまり期待していなかったのですが…。

案に反して、すごく楽しかったのでした。私がお伺いした日は、うららかな陽気に恵まれ、すがすがしい春風がそよぎ、野外でピクニックするのにふさわしい気候でした(六本木ヒルズだけど)。そんな開放的な気分で、檜の香り漂う新しい舞台で、肩の凝らない演目をプロのパフォーマンスを観るというのは、とっても贅沢な「大人の遊び」でした。正直、ぜんぜんアリですね、これは。劇場での公演とは別に、野外能みたいに野外文楽も、たまーにでいいので、やってほしい。松羽目物とかの肩の凝らない演目で、ゆるーく、観てみたいです。たぶん、初めて文楽を観る方にも楽しい公演だったのではないでしょうか。

櫓の立つ木戸口は、昔の絵でしかみたことがない芝居小屋の木戸口そのまま。博物館や美術館で芝居小屋を描いた風俗画をみる度に、「ああ、江戸時代にタイムスリップして、この木戸口を潜って、当時のお芝居を観てみたい」と、絵の中の木戸口を凝視しながら、あらんかぎりの想像力を駆使して木戸口をくぐって芝居小屋の中に入る様子を想像してみたりしていた。古典芸能が好きな人はきっと誰でもそう考えたことがあると思う。今回、とうとう実際にその木戸口をくぐれて感無量でした…と書きたいところだけど、会場整理のお兄さん達にスマートに誘導され、特段の感慨も持つこと無く、入場してしまった。惜しい。もしこれが何かのお祭りの目玉イベントだったり、あまり観たことの無い演目の初日とかだり、せめて太鼓の音とか聞こえたりしたら、わくわくしたりしたのかもしれないけど。せっかく素晴らしい檜舞台での公演なので、そういう祝祭性の演出はもう少し欲しかったかも。


二人三番叟

玉女さんが黒い尉という珍しい配役。あの、鈴ノ段でさぼったりするところも、玉女さんらしく、静かに休んでいる。むしろ相手役の簑二郎さんの方が、「さぼっとらんと、さっさと働かんかい!」とゴーインに引き戻したりして、お客さんの笑いを誘っていた。さすが、簑助一門、お客さんの笑いをとるのはお手の物。コメディ・リリーフが逆転した、ちょっと変わった二人三番叟になりました。もちろん、迫力満点でした。

演奏は、英さんと清介さんをシンとする掛け合い。野外だろうと何だろうと、清介さん率いる三味線軍団にブレ無し!バシっと決まって、大いに盛り上がりました。


日高川入相花王 渡し場の段

清十郎さんの清姫に、玉佳さんの渡し守。三輪さん、團七師匠がシンの床。

古典芸能に縁がなくて、清姫安珍伝説を知らない人には(古典芸能を知る前の私はそうでした)、なんのこっちゃな演目かもしれない。けど、ケレンが多く、最後はハッピーエンドでもないのに華やかですかっとした気分で終わる。こういう場には相応しい演目かもしれません。