国立劇場小劇場 文楽若手会

本公演で普段、主だった役を演じる機会の無い若手が主となって演じる公演。今回は4月公演で演じられた妹背山の通しのうちの後半部分(杉酒屋以降金殿まで)に井戸替が付け加わりました。

井戸替は笑えるし、音楽的にも楽しくて、面白い。4月は省略されてしまったので、無くて残念だった。楽しみだった恋苧環は、出だしの床がかなり危うかったような気もするけど、すぐに持ち直しました。いやはや、床のメンバーはいつも景事に出てくる方がほとんどだと思うのに、これだけの人数での合奏はやっぱり難しいのでしょう。里の童達はとっても可愛い。なぜ通常、里の子供たちの部分は省略されるのでしょうね。七夕らしい、可愛い場面なのに。鱶七上使は、希さんが今までの印象を覆す、迫力ある語りだったのが印象的でした。

一番面白かったのは、やはり睦さん・清志郎さんの床に簑紫郎さんのお三輪の金殿でしょうか。嫉妬に至るお三輪ちゃんの表現は圧巻でした。それでも、金殿って難しいのだということがよくわかりました。咲師匠・燕三さんの床や勘十郎さんのお三輪ちゃんの金殿は、随所に工夫がちりばめられています。お三輪ちゃんはあらゆる感情を見せ、心の動きの表現は精緻を極め、観ている方も、その場その場で「なるほど、その部分はそう解釈するのか」と驚かされます。まるで段全体、いや、それ以外の段も含めた狂言全体が目の前に立ち上がってくるような、スリリングな体験です。

それでも、若手会も面白かったです。若手会を観れば、若手と言われる人達のこともわかるし、本公演のレベルの高さがよく分かって観客も勉強になります。来年も楽しみにしています。