国立劇場小劇場 2月文楽公演 第2部

曽根崎心中」はもう、いろんな床・人形のバージョンで脳内再生できるし、なんなら杉本文楽とか、ロック曽根崎心中とか、後日談(?)の其礼成心中だって脳内再生できるし!と思っていましたが、何だかんだ言っても、いざ実際に観てみると、何度聴いても心躍る、名曲なのでした。


今回はパンフレットに咲師匠のインタビューがあり、その中で、「曾根崎」復活当時のことが証言されていました。現在の「曾根崎」が原作と文章が違うことが批判されるが、当時、役を割る(出演者全員に配役する)ためにはさらに三つ、四つ、狂言を入れる必要があったため、松竹の大谷氏が考え、一時間半ぐらいでまとめることになったことを証言しておきたいということが記載されていました。また道行についても海外公演後に、徳兵衛がお初を刺して自分が喉笛を切ってという振りがつくようになった、そのため、そこの部分の曲は松之輔が作曲したのではない等々、興味深い内容でした。


人形は勘十郎さんのお初と玉男さんの徳兵衛。お二人のお初徳兵衛はどんどん進化しています。勘十郎さんのお初は簑助師匠のお初よりも大人びた印象。玉男さんは今回、二部の徳兵衛と三部の忠兵衛を遣っていらっしゃいましたが、徳兵衛の方は床に合わせて遣い、忠兵衛の方は床よりゆったりと遣っているのが印象的でした。忠兵衛の方は床通りに短慮な人として演じてしまうと逆に説得力がなくなってしまうので、人形の方は意識的に魅力的な遣い方に変えていらっしゃるのかなと思いました。床は咲師匠と燕三師匠で、今日現在では決定版と言ってもいい、配役でした。


道行は、最後の最後、いつもは徳兵衛がお初を刺して、徳兵衛も喉を掻き切り、二人で倒れて終わりますが、今回はお初に刃を向けるところで終わっていました。実際の心中まで行かないと、余韻を感じる夢のような終わり方に感じました。お初を刺す方が衝撃的だけど(杉本文楽の勘十郎さんや以前の和生さんのもだえ苦しむお初というのもさらに衝撃的ですが)、これはこれでありという感じです。むしろ日替わりで最後が変わってもいいかも。


私が文楽を初めて観たのはちょうど10年前の2月公演の第二部でした。当時はものすごく衝撃を受けたものの、10年後もこんなにはまっているとは思ってもみませんでした。今回の公演で、咲師匠・燕三さんの床、勘十郎さん・玉男さんの人形に感銘を受けて、私のように文楽の魅力の虜になる人がきっといることでしょう。そんな人が一人でも多く増えてくれることを願っています。