神奈川県立青少年センター 文楽地方公演 桂川連理柵 曽根崎心中

毎年恒例の神奈川県立青少年センターでの文楽地方公演。今年は心中二本立てでした。

昼の部

桂川連理柵

六角堂の段、帯屋の段、道行朧の桂川


私は帯屋の段の前までは、割に面白いお話だと思うので、ここまでは何とか話について行けます。今回も特にチャリ場の笑いの部分(呂勢さん・清治師匠、義兵衛の幸助さんと長吉の清五郎さん)は、思わず笑わずにはおれない面白さでした。


私がよく分からないのは、奥の後の部分。

おとせと義兵衛が出て行き、繁斎が長右衛門に燈心の異見をするところなどは、それなりに理解できます。繁斎が部屋を出たあとの、お絹のクドキも理解できます。長右衛門が大事で商家の嫁という立場の彼女は、自分の感情を犠牲にして、長右衛門のためを思い、最善を尽くしたのです。そして、そのことを分かってほしいというクドキなのです。でも、私が分かるのはここまで。ここから先は理解不能。長右衛門の訳わかんない一連の発言&行動に、「なんなんだ、この人…」と、どん引きしてしまいます。今のところ、ここのあたりを聴いて「なるほど」と思ったことは無く、どう観れば納得できるのか、未だ分かりません。


道行朧の桂川の始まる時は、いつももやもやした気分で、観劇で楽しむ気分にはほど遠いのですが、そこを盛り上げてくれるのは、藤蔵さん率いる三味線軍団。「道行朧の桂川」は『玉藻前曦袂』の化粧殺生石の段みたいに、もう前後の脈略関係なく、独立した道行として観て、前の段のもやもやをすっきりしたい感じです。


夜の部

曽根崎心中

生玉社前の段 天満屋の段 天神森の段

神奈川県立青少年センターは、例年だと夜の部は悲しいくらいにガラガラで、ちょっと居心地が悪いくらいなんですが、今年は違いました。客席はほとんど埋まり、何度も、これ、昼の部じゃなくて夜の部だよね、と確認してしまいました。ちかえもん効果でしょうか?だとすれば、TVの影響って本当にすごいんだなと思わされます。


お初を遣われていた勘十郎さんも、今回は神妙な面持ちで遣われていました。9月に玉藻前で妖狐ちゃんを遣っていた時の、嬉しさを隠せないような、ちょっとどや顔のような…という表情とは、全然違います(失礼ですよね。すみません)。ああ、ちかえもん効果で集まった人達に、勘十郎さんのすごさが伝わったかしらん?


最後は、お初が刺されてもだえ苦しみ、清十郎さんの徳兵衛も喉笛を掻き切り、二人で倒れるバージョン。地方公演を意識して、分かりやすい終わり方にされたのかも。


床は呂勢さんと清志觔さんのシン。清志觔さんの三味線がちょっと暗すぎたかも。お初も徳兵衛も、罪を犯してのっぴきならなくなって心中するのではなく、無実の罪の汚名を雪ぐために心中するのだから、もう少し力強さがあっても良かったような気がしました。


まあ、なんであれ、夜の部、沢山入っていて良かったです。こうとなれば、今後は『曽根崎心中』をしつこくやられても仕方ないと腹をくくりますので、せめて、文楽ファンの楽しみのために、配役ぐらいはあっと言わせる工夫をしていただけないでしょうか。