東京国立博物館 特別展「大徳川展」

大徳川展
第一章 将軍の威光
第二章 格式の美
第三章 姫君のみやび
会期:2007年10月10日(水)〜12月2日(日)

http://www.daitokugawa.com/

大徳川展は混んでるだろうなと覚悟して行ったら、その通り、混んでいた。こんな展示、混んでいないはずがないのだ。一方、平常展は一部屋当たりの入場者は多くても数人というがらがら状態で、もったいないと思う反面、名品をゆったり見れるので、いつもそうあって欲しい気持ちもする。


第一章 将軍の威光

まず、入り口の大きな黄金の扇(金扇馬印 伝家康所用、江戸時代17世紀、静岡久能山東照宮所蔵)に圧倒させられた。天晴れ、と普通の大きさの扇を高く掲げたり、錦の御旗を掲げたりするだけでは、物足りないらしい。こんな大きな扇を出したら、さぞや見た人々は度肝を抜かれるだろう。確かに展覧会を象徴するものとして冒頭に持ってくるにふさわしい。もっともこれがあるために入り口から入場者が団子状態になってしまったので、この動線をもう少しなんとかしてくれればもっと良かったのだけど。

人が多くて展示を見るのはなかなか困難なのだが、興味深かったのは、活版印刷の活字(伏見版活字、安土桃山時代 慶長4年(1599)、京都圓光寺; 駿河版活字、江戸時代 慶長12年(1607)、凸版印刷(株)印刷博物館 等)。徳川家康が人々の啓蒙のために活版印刷の普及を推進したという。活字中毒者製造機国産第一号だ。

第一章の終わりの方にあったのは、光圀公の所有と伝えられる火事羽織(江戸時代 17世紀、徳川美術館蔵)。昔は火事があると大名も火事羽織を着て、火事に備えたのだと言う。黄門様が張り切って陣頭指揮に立っている様子を想像しておかしくなってしまった。黄門様の葵の御紋入り印籠もあった。まさか「このお方を何方と心得る!」なんて用途では使わなかったと思うが、何だか楽しい。

第二章 格式の美

第二章以降は、徳川家のお宝の数々。まず第二章は、能装束&能面、茶道具、絵巻等がならぶが、さすが将軍様、最高級の物ばかり。茶杓一つとっても織部がつくったもので自筆署名入りだったりする。絵巻は源氏物語の絵巻鎌倉時代 1306年、名古屋市蓬左文庫)があったが、ちゃんと出だしが「いずれの御時にか女御更衣あまた候らひけるなかに…」とあり、ああ、本当に700年昔も今も同じものを読んでいるんだ、と当たり前のことながら感動する。

第三章 姫君のみやび

第三章は姫君の嫁入り道具、お化粧道具、文房具、ゲーム等。こちらも贅沢な素材を惜しげもなく使い、美しい意匠が随所に施され、絢爛豪華さにため息が出る。そんな中で、姫様所有のお筝があったのだが、これだけは、かなり使い込まれており、胴も何度も触ったせいで磨り減っていて、音楽が好きだったのだな、とうれしくなった。ところでこのお筝は普通のお筝よりコンパクトで弦を数えてみると六弦しかない。確かお筝は十三弦だったのだが、と思い、調べてみると、六弦の和琴(わごん)という楽器らしい。音色はどんなものなのだろうか。