東京国立博物館 平常展

平常展を見てきた。

2室 国宝室

華厳宗祖師絵伝 巻第二 高山寺蔵(鎌倉時代・13世紀)

説明パネルに明恵上人との関連性を指摘してあったが、このパネルを読んだ時には、白洲正子の「明恵上人」の「華厳縁起」の章と関連付けて思い出すことができなかった。白洲正子の「明恵上人」によれば、明恵は、この絵巻の主人公の一人である義湘に恋して龍となり義湘の大陸への航海を見守った美しい善妙という女性に深い関心を持っていた。善妙の夢を見ただけでなく、善妙寺という尼寺も建てたという。その他にもいろいろと紙幅を割いて、この絵巻にまつわるエピソードが書かれている。このことを、観てから数日経ってから思い出した。
実を言うと、この絵を見てから一週間も経ってこの文章を書いているので、絵の印象があまり残ってない。惜しい。もう一度見て来たいが。。。
http://www.kyohaku.go.jp/jp/dictio/data/kaiga/43kegon05.htm


3室 仏教の美術―平安〜室町

北野天神縁起絵巻断簡(鎌倉時代・14世紀)

菅原道真の霊が廂の板間に座って石榴(ざくろ)を食べて火を噴いている。対坐している僧は道真に向かってピースをしている…のではなくて、酒水の印を結んで消火しているらしい。下記URLにこの断簡のイメージがある。
http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/exp2/w/134.html

このエピソードはお能の「雷電」になっているらしい。雷電前場は、正にこの場面で、菅原の霊が死後、彼の仏門の師であった尊意僧正のところに現れる。二人は懐かしく生前のあれこれを話すが、道真は、これから鳴神となって内裏に飛び入り、自分を陥れた人々を殺してしまうつもりだという。そして、内裏から呼び出しがあっても応えぬよう尊意に言う。しかし、尊意は、一、二度までも三度呼び出しがあれば、応じないわけにはいかない、と答え、道真に石榴を勧めると、道真は石榴を食べて火を噴いて消えていった。そして、後場が次の絵だ。

北野天神縁起絵巻(弘安本) 甲巻(重文 鎌倉時代
http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=B07&processId=02&colid=A227

ここでは、雷神(道真?)が雷を落として皆、逃げ惑っている。また、甲冑を着こんでいる人達もいる。これは、菅原道真のの左遷の首謀者、藤原時平だろうか。

北野天神縁起絵巻(弘安本) 乙巻
http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=B07&processId=02&colid=A29

ここには、まず、嘆き悲しむ人々がいる。それから、祠(ほこら)を拝む女性と侍女のように見える二人の絵がある。

その隣には、この1m足らずの絵の中で一番衝撃的な絵の、中央に赤い大口袴に上半身を露わにしている女性と対面する僧侶、その様子を陰から見ている公達という、何のエピソードから来たのか分らなかった絵がある。

さらに左には、貧しい家。そこには、母親と娘がいて、家の屋根の上には鶏がいる。

菅原道真のエピソードにはまだ分らないことがいくつもある。もっときちんと知りたい。


因幡堂薬師縁起絵巻(鎌倉時代・14世紀)

わわしい奥方が出てくる狂言因幡堂」の縁起とあらばと、一生懸命解読してみる。どうも、あるえらい人がお祈りをしていたところ、病気になり、その夢の中でお告げがあって、海岸に行ってみると、仏像が引き上げられ、その人の病も本復、お寺を建てましたとさ、という話らしい。とゆーか、字はキーワード程度しか読めず、もっぱら判じ絵です。。。webでちょっと検すれば、もっと詳細な由来が沢山出てきます。


金銀鍍宝相華唐草透華籠(国宝 平安時代・12世紀)(国宝 鎌倉時代・13世紀)

サントリー美術館で見たのとそっくりの宝相華唐草透華籠!こういう形っていうことで決まってるのかしらん。


3室 宮廷の美術 ―平安〜室町

高野切(古今和歌集)(重美 伝紀貫之平安時代・11世紀 )

「いまさらに なにおひいつらむ たけのこの うきふししけき よとはしらすや」
凡河内躬恒の歌。今更何を言うのだろう 竹の子の 憂き節の多い世とは知らないのだろうか。「物思ひける時、いときなき子を見てよめる」という詞書のある、悲しい歌。


4室 茶の美術

青磁三閑人蓋置


ちいさくて可愛い三人の人形。利休好みとか。


10室 浮世絵と衣装―江戸 浮世絵

お七と吉三郎

ごく最近にも展示されていたような。このお七と吉三郎(いわゆる八百屋お七)というのは、ご存じの通り実説があるわけだけど、最初に物語になったのは、井原西鶴の『好色五人女』だったとか。そういえば、宮辻 政夫氏の「京都南座物語」に宇治加賀掾井原西鶴竹本義太夫近松門左衛門が一騎討ちで浄瑠璃の興行成績を争ったというエピソードがあるが、井原西鶴浄瑠璃というのは残っていないのだろうか。ちなみにこの宮辻氏の本は一気に読ませる面白さだ。続編が出るとあるので、楽しみに待っているところ。


小野道風(鈴木春信筆 江戸時代・18世紀 )

傘をさして烏帽子、狩衣、指貫の典型的なお公家さん。まさに、この前見た「小野道風青柳硯」の道風そのまんま!


おっと忘れていた。最後に約13億円で落札されたという運慶作と目される「大日如来坐像」も観た。意外に小さかった。今後、研究がなされるそうで来歴も分かる可能性がある。楽しみ。
http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=B01&processId=01&event_id=5309