永青文庫  秋季展 「細川家の能面・能装束」

秋季展 「細川家の能面・能装束」
前期展示:9月23日(火・祝)〜11月9日(日)
後期展示:11月11日(火)〜12月25日(木)

http://www.eiseibunko.com/exhibition.html

もうすぐ終わってしまうので、焦って行って来た。はじめて永青文庫に来てみたが、とても紅葉がとても美しい閑静な場所にある。林に風が吹いて、紅葉が絶え間なく落ち続けていて、「林間に酒を温め紅葉を焚く」などと吟じたくなる。下戸だけど。今回は既に紅葉の盛りは過ぎていたので、来年は紅葉の盛りに来たら素敵だろうな。


細川家は代々、金春流喜多流を庇護してきた。細川元総理も子供の頃金春流のお稽古をしていて、「(桜間)金太郎が来たー!」などと叫んで逃げ回ったとかいう話をどこかで読んだ気がする。さすが、そのような家の能面、能装束は、他の美術館で見るものとは別格の優美なものばかり。装束の刺繍もどうやって刺すのかと思うほど細かいし、能面もうっとりするほど美しい。また鼓胴の蒔絵も繊細。他に西王母の桃の作り物も。これは町で売っている桃というよりは、千疋屋の店頭に出しても全く見劣りしない最高級の桃。やっぱり、本当のお気に入りのものは下賜したりせず、とっておいたのだろう。


能関係以外の展示では蔵書が面白かった。外国の本の初版本(「さまよえる湖」のスウェン・ヘディンの本とか、フランスの東洋学者、アンリ・コルディエの百科事典で「高」という頭文字を入れて製本したやつとか)があったり。かと思うと、百科事典ばかり並んだ本棚の間に、「とりあえずしまっとこう」とばかりに唐突に小説が1冊、挟まってたりして、ほほえましい。


細川家、いーなーと思いながら、館の外に出てみると、新江戸川公園に出る道があったので、そのまま歩いてみた。そこは、細川家の庭園がそのまま公園として無料で解放されているのだった。紅葉の舞い散る回遊式泉水庭園を、おひいさまになった気分で回遊して満喫しました。

さらに公園を抜けると、神田川に出た。この神田川沿いの景観がまた素晴らしい。関口芭蕉庵椿山荘等の風情ある垣根がずっと続いていて、垣根の奥は樹齢何百年の木々がこんもりと立ち、神田川側は桜並木という具合で、夕刻はまるで川瀬巴水の世界だ。ああ、うかつだった。学生時代は、時々この辺りをウロウロしていたのだが、さすがに春は桜が見事だった記憶がうっすらとあるものの、それ以外の時期は、「あのあたり、うっそうとした森があるなあ」ぐらいにしか思ってなかった。情緒なんて全く分からなかった。情けない。

ちょっと学生時代に郷愁を感じながら、永青文庫を後にしましたとさ。


ところで、永青文庫は次回、長谷雄草紙を公開するとか。混むんだろうなあ。でも見たいなあ、これは。