東京国立博物館 「国宝 阿修羅展」&平常展

興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」
平成館
2009年3月31日(火)〜6月7日(日)
http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=6113

混んでるとはいえ、後になればますます混むので、仕方なく行って来ました。


阿修羅展

興福寺といって私が思い出すのは、平家物語の中に出てくる比叡山延暦寺(山門)や三井寺(寺門)、興福寺(南都)の争い。相手が生意気だ何だといって、すぐに喧嘩したり、焼討をしたりして、しょっちゅう炎上している。もう、お釈迦様に成り代わって「あなた達、いい加減にしなさい!」と叱り飛ばしたいくらい。そんな調子なので、多分、宝物なんて、とっくの昔に焼けてしまってほとんど残ってないのではないかと思っていた。

実際のところ、それだけ権勢を誇った日本を代表する寺院にしては、宝物の数はそれほど多いとはいえないが、国宝がずらりで、さすが、大事なものは守り切ったようなのだった。

印象的だったのは、阿修羅像のみならず、八部衆十大弟子共に、造形が美しいこと。天平6年(734年)の制作なのに、これだけ美しい像を、これだけ沢山作成する実力が当時の日本にあったということが、まずすごいことだと思う。それとも渡来人が作ったのだろうか?

また、阿修羅像と八部衆達が、皆若いことに感銘を受けた。仏師は何故、敢えて若い像を作ったのだろうか?大和の国がまだ若い国だったからだろうか?それとも、蓬莱山を探しに子供たちを連れて行った徐福のお話のように、今後末永く日本を守護するように若い八部衆にしたのだろうか?それとも、仏師自身が若くて、そのことが反映されたものだったのだろうか。色々、答えの出ない想像をしてしまう。


阿修羅像の後には、鎌倉時代の立像が並んでいた。何といっても特徴的なのは、阿修羅達に比べ、ずっと大きいことだ(改めて、平成館の天井の高さも知ることになった)。尤も、美しさという点では及ばないけれども、大きさで鎌倉幕府の威厳を示したんだろう。

それから、ちょっと不思議だったのは、ガラス玉、水晶玉、瑪瑙玉、琥珀玉等の数々。もう、数限りなくあるのだ。一体、何に使ったのだろう。今の時代だったら、紐を通す穴を開けてネックレスにするか、透明なガラスの花瓶の中に入れてみるとか。。。


平常展

国宝室

花下遊楽図屏風(国宝、狩野長信筆、安土桃山〜江戸時代;17世紀)

絵的にも優雅だし、風俗的にも面白い。女歌舞伎と思われる女性達が華やかな衣装をまとって数名で踊っている。美男鬘という狂言で女性を演じる時に使う、白くて長い帯のような被り物を、女性がしている。上流の女性達は高くなった軒下の縁側で踊りを見ていて、女性達が乗ってきたと思しき駕籠は縁の下に置かれており、駕籠かきと思われる人も踊りを眺めている。幔幕の外では、お弁当の用意が出来ている。
http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=B07&processId=02&colid=A11530


3室 仏教の美術 ―平安〜室町

当麻曼荼羅図(鎌倉時代;14世紀)

当麻曼荼羅図というのは、どれも同じ構図だということにやっと気がつきました。


3室 宮廷の美術 ―平安〜室町

和歌断片は、どれもこれも、和漢朗詠集(安宅切、龍田切本、関戸本、山城切、砂子切、戊辰切、多賀切)。素敵。

新撰朗詠集(重文、鎌倉時代;14世紀)

本文の脇に赤い点が付いている。ひょっとして朗詠するための記号なのだろうか。


8室 書画の展開 ―安土桃山、江戸

桜に春草図(尾形乾山筆、江戸時代;18世紀)

恐らく晩年の作品なのではないだろうか。思いもかけず、久々に乾山一流のヘタカワイイを見れて満足。

十二ヶ月風俗図屏風(田中訥言筆、江戸時代;19世紀)

田中訥言という絵師については全く知らなかったが、活き活きとした筆遣いで好きかも。

調度手本(総目録)(近衛信尹筆、安土桃山〜江戸時代;17世紀)
調度手本(三社託宣)(後陽成天皇筆、安土桃山時代;17世紀)
調度手本(色葉并詩歌等)(照高院道澄筆、安土桃山〜江戸時代;17世紀)

やんごとなき身分の子弟のための手習いの見本だとか。このようなゴーカ講師陣の手による手本を(もちろん料紙や絵も豪華絢爛!)使う人とは、親王とかそういった人かもしれない。
ところで、「三社託宣」の三社というのは、天照大神伊勢神宮)、八幡大菩薩(石清水八幡)、春日大明神(春日大社)なのだとか。何か、いわれを調べてみたら面白そうな感じがする。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%97&dtype=0&stype=0&dname=0ss&pagenum=51&index=107973000000


9室 特集陳列 能「国栖(くず)」の面・装束

なかなか興味深かった。東博の能装束の特別陳列はいつも楽しみ。ただ、大抵は私は見たことがない曲なのだ。曲自体は、お能を観る人なら誰でも知っているものばかりなので、まだまだこれから観る楽しみが沢山あるということなのだろう。国栖も解説を読む限り、なかなか面白そう。