国立能楽堂 定例公演  鎌腹 祇王

狂言 鎌腹(かまばら) 茂山七五三(大蔵流
能  祇王(ぎおう) 佐野由於(宝生流
http://www.ntj.jac.go.jp/performance/2474.html


鎌腹

喧嘩の絶えない太郎夫婦。今日も今日とて、わわしい妻と逃げ回る太郎の間で、「山に行け」「行きたくない」の大喧嘩をするが、仲裁人が入って無事、大事に至らずに済む。ただし、仲裁人は、近所の人達(確か、地下(じげ)の人と言っていた気が。。)は、この夫婦仲の悪さを物笑いにしているし、仲裁は今回が最後だと言い、今後は夫婦喧嘩をしないように太郎を諌める。夫はわわしい妻から救ってくれた仲裁人の言葉として神妙に受け入れると、わわしい妻に追い立てられて、山に行く。とはいえ、山に入った夫は、釈然としない。そこで、わわしい妻への腹いせに自殺を思いつく。夫は様々な死に方を考案(?)して、自殺しようとするが。。。というお話。

最初に、お幕が上がるやいなや、橋掛りを夫婦がどーっと走ってきて、びっくり。橋掛りって走ってはいけないものかと思っていた。

夫が寄り道ばかりして家になかなか帰ってこないとか、家が居心地が悪くてなかなか帰りたくないとか、家に帰っても何もしないとか、家に帰ったらゆっくりしたいとか、いつの時代でも変わらない夫婦喧嘩のネタ、といったところだろうか。また、太郎は、自殺を思いついても、誰か見物人が欲しいとか、いざ死のうと思っても恐くて死ねないとか、何となく、男性にありがちといえそうな話を、茂山七五三師が、面白おかしく演じている。

実は、この狂言の終わり方は何通りかあるそうで、今回は、妻が心配して探しに来たところ自殺しようとする太郎を見つけて、死なないでくれと涙ながらに訴えたところ、じゃあ、代わりに死んで、という太郎の一言で、また夫婦喧嘩が始まるという終わり方だった。ハッピーエンドもいいけど、この終わり方も、この夫婦らしくて、面白い。こういう夫婦、結局はお似合いということなんだろうか?


祇王

平家物語の中で大好きな話の一つが、この祇王という白拍子のお話。

ところが、お能祇王は、原作とは一寸違う。シテからして、仏御前という祇王を相国入道清盛の愛妾の座から追い落としたライバルだった白拍子だ(最後は和解するのだけど)。しかも、話は、そのようなドロドロとしたお話は全く触れず、「私達、二人でしか踊りませんことよ。ねー!祇王先輩!!」という、仏御前と祇王の美しい女の友情物語になっていた。という訳で、要は別の話になっていたので、何だか「ふーん」という感じで肩透かしだった。

が、しかし、仏御前と祇王の相舞は面白かった。時々一方がワンテンポずれてたりした気がするけど、それはそういう型なのか、意図せずずれちゃったのかはちょっと分からない。でも、どっちにしろ、それはまた味となって、なかなか良かった。

ところで、ほとんど視界の無い能面をつけて相舞を舞うというのはとっても大変なことなんだそうである。そうを考えると、以前観た、大槻文藏師、梅若玄洋師、 観世銕之丞師による「三笑」とか、三人で相舞をするんだから、もっと大変なことだったのだ。しかも、三人がほとんど乱れず、軽やかに踊って飄逸とした味を出していたのだから、もう、本当にすごいとしかいいようがない。改めて言うのも愚かながら、素晴らしぎる。ああ、あの「三笑」は今思い出しても本当に楽しかった。もう一回、観たい。。