出光美術館 やきものに親しむVII 中国の陶俑 ―漢の加彩と唐三彩―

やきものに親しむVII 中国の陶俑 ―漢の加彩と唐三彩―
2009年8月1日(土)〜9月6日(日)
http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

一時期、唐三彩のフォルムの美しさや掛け流しの偶然が生み出す文様の面白さにはまっていたのだけど、いかんせん、どれもこれも同じ色の掛け流しなので早々に飽きてしまった情けない私である。

しかしながら、今回の出光美術館の展示はとても面白かった。特に漢時代の灰陶加彩に魅了された。写実的と評されているが、後の時代のように無表情な陶俑はひとつとしてなく、動物、人、ともにいきいきとした表情をしている。
素朴ながら一つ一つの作品に対する陶工の愛情と誇りが感じられる。日本の万葉集の時代にも通じる大らかさにすっかりはまってしまった。


灰陶加彩女子(前漢時代、高24.2cm)

中国人というと両手を胸の前で組んで袖で隠すポーズを思い出すが、すでに前漢時代からの習俗なのだった。この女子もそのようなポーズをとって座っている。ちなみに、正座しているようにも見えるのだが、どのような座法なのだろう。


灰陶加彩貼花人物禽獣文器台(後漢時代、高28.0cm)

器に動物や人間が貼り付けられている楽しい作品。動物は、亀、狐、犬、兎、豚等に見えるのだが、本当は?とにかく、人も動物も共に楽しそうで、見ている方も楽しくなってくる。


緑釉獣環耳壺(後漢時代、高41.0cm)

なかなか素晴らしい壺なのだ。さすが中国では1cから2c頃にこのような壺がすでにできていたのだ。


灰陶加彩神将(唐時代、高66,5cm)

彩色や金箔が残っているのが印象的。元はかなり華麗な像だったのだろう。


灰陶加彩楽人 六体(唐時代、高24.8cm-25.3cm)

吉祥天女のような美しい楽人達。髪はそれぞれアップにしていて朱のドレスを着ている。楽器は、銅鐸のようなもの、チャイナシンバルのようなもの、尺八風に音を鳴らす縦笛、琵琶、パンフルートのようなもの、横笛の構成。笛3、弦楽器1、打楽器2で低音楽器が皆無なことを考えると、比較的高い音域を使った、やわらかな音色の軽やかな音楽を奏でていたのではないだろうか。まさに天女の楽団のようだっただろう。


灰陶加彩楽人 四体(唐時代、高18.5cm-18.3cm)

こちらは上記と似ているが、座っている。楽器は、太鼓、チャイナシンバルのようなもの、琵琶、パンフルートのようなものの構成。上記の人形もそうだったが、琵琶の弾き方が今の弦楽器の弾き方と若干異なる。上記の六体の方は立って演奏していて、琵琶はバイオリンのように、胴の部分を顔に近づけ、指板の部分を顔から遠ざけている。こちらの座った楽人も、琵琶の胴の部分を高くして、指板版の方を下にしている。この演奏フォームだと複雑なメロディの曲を弾くのは難しそう。となると、琵琶はメロディ担当ではなく、伴奏担当だったのだろう。

古い時代の中国の音楽、聞いてみたい。