梅若会定式能 弱法師 秀句傘 道明寺

4月18日(日)午後1時開演 梅若能楽学院会館
梅若会定式能
能 弱法師 盲目之舞 梅若 晋矢

能 道明寺 笏拍子之伝 角当 行雄・会田  昇・角当 直隆

狂言「秀 句 傘」山本東次郎 山本 則秀 山本 則重 

仕舞
笠 ノ 段 梅若 靖記            
枕 ノ 段 森田 宰永
山  姥 キリ 松山 隆之
http://umewakanoh.exblog.jp/

前々から観てみたかった「弱法師」と「道明寺」が挙がっていたのでコレハコレハ一挙両得と馳せ参じました。が、体調がイマイチで、あまり覚えておらず…。またリベンジしないといかんなあ。

梅若能楽学院会館は初めてお伺いしました。大正ロマン風なレトロな感じがとても素敵でした。時々通りを走る宣伝カーの拡声器からの声が聞こえなくも無かったけど、逆に言えば梅若玄祥師ら梅若会の力強い謡が建物の外で聞けるってことなんだろうか?天気のいい日曜の午後、謡や囃子が遠くから聞こえる中、ぼーっと窓際で本を読みつつカフェラテを一口…なーんて生活ができる近所の人が本気で羨ましいと、思ってしまった。


能 弱法師 盲目之舞 梅若 晋矢

面が紅顔の美少年という感じの面でとても美しかった。装束は、紅入(橙色)の縫箔に青の水衣なのだが、青の水衣が紗か何かの透明感のある素材で中の橙色の縫箔が透けて見え、まるで夕陽の沈む西の空のようなのだ。このような出立で、高窓からのやわらかい日の光を浴びながら(ここの能舞台は自然光が入るのだ)、中正方向に杖をついて歩いて来る俊徳丸を見ていたら、もう筋なんか知る必要無く、これだけ見れば良い気がしてしまった。

小書「盲目之舞」は、玄祥師の「演目解説」のプリントによれば、「短縮演出でクリ・サシ・クセが省略されイロエ掛り中ノ舞が入ります。あとクルイの部分で橋掛へ行き、アイとぶつかり合う型どころがあり見せ場となっています。盲目の型どころといいますか、杖を使って写実的な型を演じますが、能の様式美が要求されます」とのこと。このアイとぶつかり合う型のところは、本当にアイと肩を交互に二三回ぶつけ合う(往来の人々にぶつかってしまう様子を表している)。盲目の人の無力、悲哀を感じさせる、優れた型だと思った。


狂言「秀 句 傘」山本東次郎 山本 則秀 山本 則重 

東次郎師には珍しく、一瞬だけど何となく苛立っているようなご様子が察せられた場面があり、若手のお二人の演技がお気に召さないのかしらんとその時は思っていた。が、今(5月1日)考えれば、弟君の則直師の御容態が良くないことが気がかりでいらっしゃったのかもしれない。ご心痛はいかがばかりかと存じます。則直師の柔和な笑顔が好きでした。もうお顔を拝見できないかと思うと残念です。


能 道明寺 笏拍子之伝 角当 行雄・会田 昇・角当 直隆

後シテが白太夫で興味深かった。

去年、京都に行った時、北野天満宮に伺ってみたら、末社に白太夫神社というのがあって、その解説プレートには、確か「天満宮にはからなず白太夫神社の末社がある」という趣旨のことが書いてあって非常に面白く思った(今、控えが見つからないので字句通りの引用が出来ないのだけど)。私は「天神様を見つけたらとりあえずお参りしときなさい」という家訓(?)に則って、天神様を見つけたらとりあえずお参りするようにしているので、関東地方の人間としては人並みに天神様にお参りしていると思うけど、白太夫神社が末社にあったかどうか、記憶にない。多分無かったと思う。

でも、京都の北野天満宮にはでは白太夫神社がちゃんとあったし、この「道明寺」にも白太夫が出てくるし、文楽・歌舞伎の菅丞相が出てくる「菅原伝授手習鑑」にも白太夫という登場人物が出てくるし、関西では馴染み深いのかもしれない。色々関東の人間には気がつかないことがある。

笏拍子が面白かった。白太夫が海老茶の漆塗りの笏を二つを叩きあわせてシテ柱にもたれかかりながら音を鳴らすのだ。玄祥師のプリントによれば、「囃子以外に確実に音を出すのは『隅田川』の鉦、梅若では羯鼓、そして『道明寺』の笏拍子の笏があります」とのこと。


<番組>
能 弱法師 盲目之舞 梅若 晋矢
ワキ 福王 和幸
間 山本 則孝 
笛 藤田朝太郎
小鼓 幸  正昭
大鼓 亀井 忠雄


能 道明寺 笏拍子之伝 角当 行雄・会田  昇・角当 直隆
ワキ 殿田 謙吉 則久 英志 御厨 誠吾
間 山本泰太郎 
笛 藤田 次郎
小鼓 亀井 俊一
大鼓 佃  良勝
太鼓 小寺 佐七


狂言「秀 句 傘」山本東次郎 山本 則秀 山本 則重