五島美術館 「 陶芸の美」

開館50周年記念名品展III
陶芸の美
2010年6月26日(土)−8月8日(日)
http://www.gotoh-museum.or.jp/

陶器の展示と講演のメモ。

面白かった話は、砧青磁の名前の由来(お茶の世界では有名な話なのかも)。砧青磁というのは、円筒形の胴に比較的細い首がついており、その首の両側には龍やシャチホコを象った取手がついた形の青磁のこと。この名前は利休が付けたそうで、かつて伊達正宗が所持しその後利休が所有し、今は静嘉堂文庫美術館にある砧青磁(名は失念)の花入れがあり、それには伊達正宗が所有していた当時から胴に大きな痛々しい亀裂があるそうだ。で、利休がそのヒビを見て「ひびきあり」としたので「砧」と言われるようになった、と「塊記」に書いてあるのだとか。
これは、利休が言ったからますますその花入れの名を高めることになったけど、狂言に出てくる秀句好きの何某みたいな人が言っても、わわしい妻に笑い飛ばされて終わりな気もする。


展示で一番気に入ったのは、「鉄絵牡丹文壺(絵高麗)」(明時代、一六世紀)。鉄分のせいで白地がクリーム色となったところに焦茶の鉄絵で文様が描かれていて、そのセピア色の世界は、まるでインドネシアの影絵の人形劇、ワヤンを見るよう。蓋に牡丹文があり、肩には鴨のような鳥が何羽もいて、胴の部分には、すくすくと空に向かって伸びた茎の先に花が咲いている。この花は、壺の名前「鉄絵牡丹文壺」から考えたら牡丹と考えるのが妥当なのだろうけど、胴の下の部分には水文のような渦巻文様があったりするし、肩に描かれた鴨との組み合わせから考えても、夏の朝日を浴びた睡蓮が花咲く様子に見えてしまう。眺めているうちに何か物語が展開しそうな気がしてくる、ガムランの演奏を聞きながら見たいような文壺なのでした。


何だか展示を見ていたら、久々に大阪市立東洋陶磁美術館に行って安宅コレクションを観てうっとりしたくなってしまった。次に大阪に行く機会は月末の週末の文楽公演だれど、これだとちょうど休館期間中。うーん、残念…。