地震と近況など

この一つ前のメモで「現代の人と比べれば、戦国時代に生きた人達にとって、未来とはずっと頼み難いもので」等と書いたりしたのですが、現代においても、未来はなかなか頼み難いものでありました。


本震の時は会社にいて、結局、当日の夜は会社に泊まることになりました。6:00pmぐらいに「JRは本日は動かない」と発表があったので、忠臣蔵じゃないけど「エイエイオー」とか言って気合を入れて、歩いて帰ろうとしました。が、他の人に「暗い夜道に一人で帰るのは大変危険だ。第一、行き倒れたどうするのだ」等と強く諭され、確かに20km以上の距離を歩ける自信もなかったので、とどまることにしたのです。その日の夜は、帰宅困難者の人達で、「我社の防災計画、ここが駄目!」、「我がフロアの防災班長迷言集」、「体験者が語る、当ビル各フロアの揺れ方チェック」、「ご近所さんのビル、耐震性品評会」、「震度5弱を体験して――私が住人になりたいビルはここだ!」等の話題で大いに盛り上がりましたが、その時は、まさかここまで広範囲にわたって想像をはるかに超える甚大な被害が襲っているとは思わなかったのでした。


その後の一週間は、都内のように直接被災していなくても、なかなか大変でした。余震が続く中、計画停電の影響で電車が満足に走ってなかったり、大規模停電の恐れという発表により会社から帰宅指示が出たものの、駅は大混乱だったり、ご近所の買出し戦争には連戦連敗、切れかかっている生活必需品や生鮮食料品が入手できなかったり。私は一人ですし、仕事が結構忙しかったことが幸いして、あまり不安を感じることはありませんでしたが、東北地方に親族や親しい方がいる方、小さなお子さんがいる方、お年寄りのいらっしゃる方、自宅の被害がひどかった方等は、心休まらない日々が続いたことでしょう。

そのようなな中、何かとヒトのキモチに触れることの多い一週間でもありました。思わぬ人にやさしさを示されたり、普段冗談ばかり言っている人がふと哲学的なことを言ったり、時たま声をかけたりお菓子を分けたりしている若人から「いつもありがとうございます」とお菓子をもらったり、海外のビジネス・パートナーからお見舞いメールを貰ったり、いつも行くカフェの店員さんから「独立してケーキ屋さんを開くので今日が最後なのです。ありがとうございました」と聞かされ、エールを送ったり…。震災が、人の気持ちをオープンにさせたのでしょうか。

そして、この週末は、「地震と買出しで疲労困憊」という両親の様子を見に(別に被災した訳ではないのですが)、実家に帰りました。ただ単に一緒に家事をしたり、お茶しながら甘いものをつまんだり、お散歩に行ったりしただけですが、私の方も、そういう普通のことをすることで、実はそれまで緊張が続いていたことに気付き、リラックスした気分を取り戻すことが出来ました。


この度の東北地方の地震を引き金とした災害は想像を絶するとしか言いようのないもので、この困難に立ち向かっていらっしゃる東北地方の皆様の気持ちを思うと、本当に胸が痛みます。

私たち関東に住む者が、東北地方や日本の復興のために出来ることと言えば、やはり、節電節約に加えて、冷静な判断力と思いやりの心を持って、しぶとく安定的に日常業務や日常生活を続けることだと思います。仕事柄、海外とのやりとりが多いので、今のようにグローバルでボーダーレスな世の中にあっては、そのようなしぶとい日本の姿を海外に示して、海外企業から今後も投資する価値のある市場と思われ続けることは特に重要なように思われます。


現在、国立能楽堂国立劇場東博はクローズしているようです。東電の計画停電の範囲が大きいことを考えれば、少しでも停電地域を少なくするため、国立の組織が節電に協力するのは、由ないことではないでしょう。確かに計画停電のせいで医薬品や生活必需品の工場が操業停止したり、病人やお年寄り、両親が共働きで子供だけしかいない家庭で停電がおきたりしている時に、能楽堂や劇場、美術館で100%楽しくすごすことは出来ない面もあります。が、土日祝日は今のところ計画停電も実施されていないようですし、そういう時は、運営上問題がなければ開場されてもいいのではないかな、という気はします。人の心を癒したり鼓舞する美術や芸能は、こういう時こそ、懐かしくゆかしく感じてしまいます。