根津美術館 国宝 燕子花図屏風 2011

コレクション展 国宝 燕子花図屏風 2011
2011年4月16日(土)〜5月15日(日)
http://www.nezu-muse.or.jp/


以前の根津美術館といえば、ゴールデンウィーク中は恐ろしく混んでいたので、5月5日に根津美術館に行くなんて自殺行為だと思ったけど、予定されていたKORIN展が来春まで延期になったためか、それほどひどい混雑というわけでもなかった。


展示の目玉はもちろん、「燕子花図屏風」(尾形光琳筆、6曲1双、紙本金地着色、日本・江戸時代、18世紀)。花や葉の形は本物の燕子花をよくよく観察しなければ描けない程、よく特徴を表しているけれども、色は花の濃紺と群青、葉は萌葱。構図は金地にアンシンメントリーに、リズミカルに燕子花を配している。考えてみれば、光琳がこの「燕子花図屏風」を描いた頃の美術界といえば、狩野派による、写実的に細かく描写する花鳥風月の図が主流だった。光琳の「燕子花図屏風」は、敢えてその逆を行き、削ぎ落とされ、単純化された意匠の美という、宗達が達した境地を目指したということなのだろう。


他に、気になったのは「武蔵野図屏風」(6曲1双、紙本着色、日本・江戸時代、17世紀)。「武蔵野は月の入るべき山もなし 草より出でて 草にこそ入れ」の歌を表した屏風図。「法橋宗達」という署名が入っているが後のものだという。確かに、全然宗達っぽくない図なので、宗達なのかそれとも違うのかとドキドキせず、安心して見ることができる。むしろ、前日に世田谷美術館で観た白洲正子展の「武蔵野図屏風」(6曲1双、江戸時代、17世紀、東京・東京富士美術館)の方が宗達の精神に近い気がする。この図には、右隻の下部に大きな銀色の満月があり、その大きな満月が草の下から登ってくる様子は印象的だ。以前観て強く印象に残っていたけれどどこに所蔵されているのか失念していた。富士美術館にあるようだ。


庭園ではちょうど杜若が満開で、「燕子花屏風」を観て本物の杜若を観て、という幸せな時間を過ごすことが出来た。しかし、来年、KORIN展が開催された暁には、絶対に混むだろうなー。